居心地の悪い賃貸
居心地の悪い賃貸
半年前に私の両親は賃貸のマンションに引っ越した。
私は近くでひとり暮らしをしているので、良く両親の所に顔を出した。
しかしこのマンションに入るといつも、私の心はソワソワとし始める。
正直に言って居心地の悪さを感じるのだ。
引っ越したばかりで馴れないのもあるだろうが、それを差し引いても悪い。
マンションの構造はお洒落で豪華だし、陽当たりも良い。どうしてこんなに妙な気分になるかと思うだろうが、一つ思い当たる節があった。
リビングから廊下を隔てた奥の所に母の部屋がある。リビングからはその扉のドアノブ位までが見えるのだが、いつも母の部屋の扉はひとりでに開け放たれ、そこから少年が顔を半分出してリビングの方を覗いているのだ。
そんな事が一度あった、とかの話ではなく、私がこの賃貸マンションに遊びに来た初日から今に至るまで、ずっと少年は私たちの過ごすリビングを窺っているのだ。母の部屋に近付くと、少年は奥に引っ込んでいって跡形もなく姿を消してしまう。
おそらく居心地の悪さはこれだろう。
両親はこの事には気付いていない。
このマンションでの暮らしにも満足している様である。
少年の事は両親には言わない事に決めた。




