ご近所さんのSNS
ご近所さんのSNS
今の時代、若い世代なら大半がSNSをやっているだろう。俺もそのうちの一人で、日頃の何でも無いことや、ちょっとした旅行だったり、友人と集まった時は必ずその時の写真をSNSに上げて発信していた。
ある時、見知らぬ名前のアカウントからフォローの通知が来た。
フォロワーの数が多いことをある種の称号だと思っていた俺はその『イロハ』とかいう名前のアカウントが誰かもわからぬままフォロー仕返した。
次の日にいつもの様にSNSを開くと、昨日フォローしあった『イロハ』が、何件も写真付きのつぶやきを投稿している様だった。
俺はそいつの投稿した写真を何枚も見たが、顔写真は載せていなかった。過去のつぶやきを見てみても、風景や店の写真しか出てこない。言葉遣いから『イロハ』が女であることしかわからなかった。
「あれ、ここって」
『イロハ』の最新のつぶやきに、見覚えのある写真が投稿されていた。うちの目と鼻の先の公園にある特徴的な遊具と、その奥に桜が満開に咲いている写真だ。
俺がベッドで寝転がっていた体を起こして窓から目の前にある公園を見下ろすと、やはり桜は満開であった。
「近所の奴なのかな?」
再び寝転がってつぶやきを眺めていると『イロハ』がまた写真を投稿した。それはまたもやうちの近所のワイン屋の写真であった。
俺がわからないだけで、相手は俺の事を知っている奴かもしれないな。
そう思い立った俺は『イロハ』にダイレクトメールを送ることにした。
『どうも、初めまして……かな?笑 うちの近所の方みたいですね、もしかして僕の事知っている人ですか?』
メールを送ってスマートフォンの画面を閉じると、直ぐに通知があった。みると、ダイレクトメールが来ている様だった。
いやに早いなと思いながら、俺は『イロハ』からのメールを開いた。そこには一枚の写真が添付されている。
「え!?」
『イロハ』が俺に送り付けてきたのは、うちの家を正面から撮影した写真だった。
「……なんだよ、佐藤か後藤のイタズラかよバカ野郎!」
近所のツレのイタズラだと悟った俺は、ベッドから立ち上がって窓から家の前を覗いた。
そこで、見知らぬ背の低い女性がスマートフォンを構えてこちらを見上げて手を振っていた。
女の顔は異様にでかくて長く、厚化粧で肌は真っ白になっていた。真っ赤なルージュをした唇から茶色い歯と、歯茎が剥き出されているのがここからでも見える。
どうみても見知らぬその不気味な女は、つり上がった目で俺を見て、カタカタと規則的に手を振っていた。
「うわっ!!」
怖くなった俺はカーテンを閉めて、二度とはそこから顔を出さなかった。
するとまたダイレクトメールが来た。送り主はやはり先程の化物の様な女『イロハ』だった。
『沢村佑介くん。今日は顔を見れて良かった。
また来るね』
俺はもう二度と知らない相手をフォローしない事にした。SNSを通じて見も知らぬ女にストーカーされるのはもうごめんだからだ。




