ミミちゃん
ミミちゃん
私のクラスにはミミちゃんという女の子がいる。
ミミちゃんは明るくて優しい女の子なんだけど、いつも一人で過ごしていました。
なんでミミちゃんが周りから避けられているのかというと、ミミちゃんは校内放送があると、必ずうずくまって両方の耳を手で遮るのです。
その様子を見ているクラスメイトたちは、ミミちゃんは校内放送からお化けの声が聞こえているんだ、という噂をたてました。
するとそれがたちまち学校中に広まって、ミミちゃんは皆から気味悪がられて避けられるようになったのです。
でも私はそんなミミちゃんが気の毒に思った。校内放送からミミちゃんにだけお化けの声が聞こえるわけがないと思って、私は教室の隅っこで本を読んでいるミミちゃんに話し掛けた。
ミミちゃんはとても嬉しそうに私の顔を見て、ニコニコと笑いながら色んな話しをしてくれました。私も楽しくて、一緒になって笑った。
ミミちゃんとお喋りしていると、突然校内放送があった。
『山田先生。山田先生職員室までお越しください』
するとわいわいと騒いでいた教室のクラスメイトたちが静まり返り、一斉にミミちゃんを見た。
ミミちゃんはいつもの様に耳を塞いで机に突っ伏していた。
その様子を見てクラスメイトたちはひそひそと話始めた。
未だにうずくまっているミミちゃんに、私は思いきって聞いてみた。
「ミミちゃんは、校内放送からお化けの声が聞こえるの?」
するとミミちゃんは不思議そうに顔を上げて
「え、違うよ?」
と言うのです。なので私はじゃあどうして校内放送があると耳を塞ぐのかと尋ねてみると、ミミちゃんはこう言いました。
「校内放送があるとね、私の耳元で男の人が話すの」
「男の人? 近くには居なかったけど……それで、なんて言われるの?」
するとミミちゃんは涼しい顔で
「耳を塞いでいるからわからないよ、ゴニョゴニョっておじさんの声が聞こえるの。でも、この前耳を塞ぎきれなかった時はこう言われたよ
――歩道橋から飛び降りろ」
私はゾッとしながら質問しました。
「校内放送があるといつもその男の人が居るの?」
「今も居るよ」
「え?」
「久しぶりに話し掛けてもらったから、嬉しくて耳を塞いでないの。でもね、さっきからずっとうるさいの
ころせ、ころせ、ころせって、耳元でずっと言ってるの、あははは」
笑うミミちゃんを、私はひきつった顔で見下ろして教室を一人で後にしました。
ミミちゃんは、今でも校内放送があると耳を塞いでいます。




