ビデオカメラ
ビデオカメラ
ある日私は大学の友人と心霊スポットに行きました。
男友達二人と行ったのですが、そのうちの一人が面白がってビデオカメラを持ってきたのです。
私たちは深夜にその廃墟に訪れると、わいわいと騒ぎながら探索を始めました。その様子をビデオカメラに撮しながら大きな声でふざけていました。
別段その心霊スポットでは何が起きる事もなく、三人でそのまま私のアパートに帰りました。
家に帰ると早速ビデオカメラをテレビで再生します。しかし、どういう訳か音声が無いのです。
ビデオカメラが壊れてるんじゃないか?
いやそういう心霊現象だ。
などと言い合いながら、私たちはまた大きな声で騒ぎ、盛り上がりました。
テレビに写し出された楽しげな私たちは、無音のまま手を挙げ、走り回り、楽しそうに何かを言っていました。
しかし私たちの余裕は、その瞬間が来ると消え失せました。
ブツッと音がして、唐突に音声がで出したかと思うと、私たちのがなりたてる喧騒をかき消す程に大きな――それこそビデオカメラのすぐ隣でその事象が起こっていたかの様なボリュームで聞こえ始めたのです。
複数の声が同時に――――
それは啜り泣く様な女の声だった。
「あーーーぁーーーあぁーーーー」
怒り狂う男の声だった。
「……ろしてや……はら……たを!……しね! しね!」
甲高い女の声だった。
「ひぃぃいいいいあぁぁぁああハハハハハ!! いいいひひィィ!!」
幼い声だった。
「ゆ……ゆる…………ない」
画面に映る私たちはまだ楽しそうに笑っている。
画面の前の私たちは青ざめて凍り付いた。
撮影していた友人は踵でビデオカメラを叩き壊した。
映像が途切れて真っ暗になっても、その恐ろしい音声は止まらなかった。
「ぁぁああーーーあぁあぁぁぁああ」
「……まえらの! ……あたまか……! ……潰し……!」
「ぃぃいいあーーハハハハハ! ハハハハハハハハハハ!」
「ころす。ころす。ころす。」
私たちは弾き出されたかの様にアパートから逃げ出した。




