表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/160

廃村

   廃村


 僕には変わった趣味がある。バイクで一人廃墟を訪れて、その美しくも儚い光景を写真に納める事だ。

 その日も僕は昼間にバイクで一人廃墟となった村を目指していた。

 とても車では通行出来ない落石や倒木ばかりの林道をひた走り、とある山林をひたすらに登るとじきにそれは現れた。

 十数件の平屋の並ぶ廃村。『華月』という名前に惹かれてここに来たが、僕の直感は正しかったようで、保存状態の良い廃屋が建ち並んでいる。

 近くには神社の廃墟もあった、祠や鳥居は荒れ果てて傾いていて、塗装は剥げている。信仰の失われた神社はどうひてこうも切なげに見えるのだろう。

 僕はバイクを停めると、その風景に一眼レフカメラを向けた。

 伸び放題の草をかき分けて廃屋を巡る、するとこの集落では一際大きな日本家屋が見えてきた。

 僕は吸い寄せられるようにそこに歩み寄り、カメラを向けた。

「ん?」

 カメラを構えていると、その立派な家屋の丸型の障子に影が横切った気がした。

 しかし、辺りに車や自動車も無く、こんな山奥に徒歩でこれるはずもないのだ。

「気のせいか? ……それとも獣か」

 少し身構えながらも、その家屋の妙な魅力に取り憑かれた僕は、足音を殺してそのまま近付いていった。

 玄関の前にまでたどり着き、再びカメラを向けると、玄関の扉がピシャンと音を立てて勢いよく開いた。

 驚いた僕はカメラから目を離して目前の扉を見るが、扉は開いてなどいなかった。

「なんなんだ?」

 再びカメラを構えて正面を見据えると、開け放たれた玄関から、鉈を持った大男がこちらに走ってきていた。

「うわぁぁああっ!!」

 男の目は血走って、正気では無いような気配がした。しかしカメラから目を離すと、やはりその家屋の玄関の扉は閉めきられたままであった。

 訳のわからない僕は、しかしカメラ越しにしっかりと異様な光景を見ていたので、走って逃げた。


 この話を誰にしても信じてもらえない。しかし僕が咄嗟に撮影していた写真には、ブレながらも、開いた玄関に佇む鉈を持った男の手元が写し出されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【実話怪談を収集しています。心霊、呪い、呪物、妖怪、宇宙人、神、伝承、因習、説明の付かない不思議な体験など、お心当たりある方は「X」のDMから「渦目のらりく」までお気軽にご連絡下さい】 *採用されたお話は物語としての体裁を整えてから投稿致します。怪談師としても活動しているので、YouTubeやイベントなどでもお話させて頂く事もあるかと思います。 どうにもならない呪物なども承ります。またその際は呪物に関するエピソードをお聞かせ下さい。 尚著作権等はこちらに帰属するものとして了承出来る方のみお問い合わせよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ