友達の家のエアコン
友達の家のエアコン
私が小学五年生の頃、仲良しの由利ちゃんの家に泊まりに行った時の話です。
冬の寒い日だったと思います。薄く雪の積もった街路樹を眺めながら、私は由利ちゃんの家に歩いていきました。
由利ちゃんと由利ちゃんのお母さんに迎えられて暖かい玄関にお邪魔すると、まずはリビングに通されて晩御飯を頂きました。その後由利ちゃんと二人でお風呂に入って、パジャマに着替えました。
私たちは手を繋いで二階に上がり、由利ちゃんの部屋でゲームをして遊ぶ事にしました。
すると突然に、由利ちゃんの部屋でゲームをしていると、何か妙な気配が私を襲いました。
勿論確信などは無いのですが、誰かにずっと見られているような、変に落ち着かない気持ちになったのです。
由利ちゃんの部屋に来るのは始めてではなかったけれど、そんな事はその時が始めてでした。夜といういつもと違うシチュエーションが、なんとなく私を浮き足だった気持ちにさせているのかな、とそんな事を考えていた記憶があります。
それでも私が由利ちゃんと楽しく過ごしていると、下の階から「そろそろ寝なさーい」と声がしたので、私たちは布団を二枚敷いて寝る準備をした。
「内緒でお話ししてよっか」
そう言いながら由利ちゃんは布団に座って、部屋の電気を消そうと天井から吊り下がる紐を見上げて手をあげました。
その時――――
「きゃっ!」
小さな悲鳴が反響した。由利ちゃんの見上げている方を見ると、そこには古いエアコンがあった。
そのエアコンと天井には五センチ程の僅かな隙間があるのだが、そこから眉間にシワを寄せた瞳がこちらを覗いていた。白い瞳を光らせて目を見開いている。
慌てて部屋を出た私たちは、顔を見合わせた。
そうしてもうあの部屋では眠れそうに無かったので、由利ちゃんの弟に事情を話さずに部屋を交代してもらった。
由利ちゃんがその後エアコンの上の目を見ることはなかった。




