くねくね?
くねくね?
俺が大学の友人と深夜の0時頃にドライブをしていた時の話だ。
俺たちは二人でパチンコを打った帰りに、わいわいと今日打った台の話で盛り上がっていた。
大きな声で騒いでいると、自分たちが見も知らぬ辺鄙な田舎に迷い混んでいることに気が付いてきた。
だんだんと街灯も少なくなってきて、辺りは田んぼだらけになっていた。勿論国道なんかはとっくに外れていて、地元民しか通らないような細い道を走っている。
「何処ここ、ナビいれるわ」
運転席のUはそう言うとナビを自宅に設定した。
しかしナビは距離優先になっていて、俺たちはろくに鋪装もされていない車一台通れる程の山道の手前で案内されてしまい、そこで停車した。
「ここは流石に嫌だわ、元来た道戻るわ」
Uはそう言うと街灯も微かな田んぼを横目に見ながら、細い道で何度も車を切り返してUターンしようとする。
助手席で外を眺める俺は、何処までも続く田んぼの畦道に何か白い物を認めた。
「なんだあれ、人? ……じゃないよな」
「あー?」
見ると三十メートル位先の田んぼの畦道に、月の光に照らされて、何か白い人みたいなのが蠢いているのが微かに見える。
「なんか変な動きしてね?」
Uが車を停めてそちらを凝視する。俺もつられてそちらを見ていると、その白い人みたいなのは両腕をぐねぐねと天に掲げる様な仕草をしているのがわかった。
「うわ、マジじゃん何してんだよこんな時間に」
不気味に思ってそちらを凝視していると、白い人はこちらに気付いたらしく、奇怪な動きを止めてこちらに振り返った。
「こっち向いたぞ、U早く出せ!」
「わかってるけど道が細いからよ!」
Uは車を切り返そうとしたが、道が細すぎる上に暗く、側には溝があったので容易にはいかなかった。少なくともあと三回は切り返さないと戻れそうにない。
俺がUの顔から畦道の方に視界を戻すと、白い人が猛然とこっちに向かって走ってきているのが見えた。
「うわぁああ! 来てる! 走ってるって早く出せって!」
「待てって! あと少しだから!」
車を急いで切り返すU。どうしてもあと一回は切り返さないと無理そうだ。その間俺は腕を振って凄い早さでこちらに駆けてくる白い人を、鳥肌をたてて助手席から見ていた。
その白い人は長い髪を振り乱し、どうやら女であるようで、もう俺たちの車まで十メートル程までに迫って来ていた。
「U早く! もう来るって!」
「待て! まっ…………いけた!」
車は溝に落ちるぎりぎりで何とか切り返せたようで、Uは慌ててギアを操作した。
すると車は大きな音を立ててエンジンを空回りさせ、走り出さなかった。
「ニュートラルに入ってるって!」
「わかってるよ慌てさせんな!」
ギアをドライブに入れると、マフラーが煙を吐き出して、車は凄い勢いで走り出しました。
冷や汗をかいて俺がUから女の方に視線を戻すと、あと五メートル程の至近距離に、白装束を着た女が必死の形相で迫っているのがら見えた。目があったと思う。
そして過ぎ去る瞬間に女は
「ぃぃいエェェェェエエエッッ!」
と物凄い奇声を発した。俺達はバックミラーに映る女を見ながら、肌に粟を立ててその場を走り去った。
街灯も無い深夜の田んぼで、あの白い女は何をしていたのか未だにわからない。




