水子供養の神社
水子供養の神社
ある山の峠道をひたすらに登っていくと、そこに水子供養の神社がある。
俺は仕事の帰りが遅くなって、近道をしようとしたらその峠に迷い混んだ。
今更にナビを設定するが、このまま進んで行った方が近いようなので、街灯もまばらな山林を、ぐねぐねとつづら折りに自動車を走らせた。
少し開けてきて道が平坦になって来たかと思うと、ポツンと赤い鳥居が見えた。
ここが水子供養の神社だと知る俺は、うすら寒い気になって速度をあげた。
通り過ぎる時に、鳥居の奥に二十センチ程の地蔵が数百体も並んでその身を寄せあっているのが見えた。
神社を通りすぎて、少し登っていくと街灯の無い暗闇のなかに、やけに縦に長い古いトンネルが見えて来た。
怖くなった俺は、トンネルを抜けた後の下りの峠を、なかなかのスピードで飛ばした。
カーブに合わせて右に左に揺れる車内。運転に自信のあった俺は、早くこの場を抜け出したい一心だった。
時速は六十キロ。ヘアピンカーブに差し掛かった俺は、その手前でブレーキを踏んで速度を下げようとした。
「……ッ!?」
ブレーキの下に何かが挟まっているのか、何度踏み直しても速度は一向に緩まなかった。足元に物なんて当然置いていない筈だった。
速度の下がらぬままに、俺はヘアピンカーブを曲がりきれず、カーブミラーに激突した。
凄まじい衝撃でエアーバックが作動して、俺は車内で無茶苦茶になってかき乱された。
シートベルトが胸に強く食い込んだまま、俺はエアーバックが萎んでいくのに合わせて体を沈ませた。
そして項垂れた視界に運転席の足元を見た。
一体何が挟まっていたのだろう……
ブレーキペダルの下に、三人の赤子のような物がその身を絡ませて踞っていた。
そこで意識の途切れた俺は、気付いたら病院のベッドで目覚めた。




