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富士山の五合目


 日本の誇る富士山の五号目までは車で行けるという。五号目の時点で標高は約二千四百メートルともなり、これは車で行ける日本最高高度であるらしい。

 気軽に登山に挑めると言う事は非常に良い事でもあるが――富士山が日本三霊山に数えられる程の聖域であり、怪奇と隣り合わせにあるという事も忘れてはいけない。


 Y君から聞いた話。

 富士の登山に挑戦しようと、友人と車で五号目まで向かっていたらしい。

 富士山スカイラインを上って曲がりくねった峠道に出る、標高が高くなるのにつれて段々と周囲に霧が立ち込めて来たので、フォグランプを点けて走行していた事を覚えていると言う。

 なかなか辿り付かないな、と思って後部座席にいたY君が道路脇にやると、霧で視界の悪い中、白い服を着た長髪の女が車に向かって手招きしているのが見えた。

 ギョッとしたが、視界が霧でハッキリとしなかったので、ひとまずは何も言わずに通り過ぎたらしい。

 しかしそれからも変わり映えのしない曲がりくねった道の端で、白い服を着た女が立ってY君達に手招きをしている。霧で視界が悪いからなのか、どうも同じ道に戻ってしまっている様にも感じたという。

 そんな事が三度も続いた。

 これは勘違いではないと気付いたY君は、白い女の事をみんな伝えた。

 するとまた、向こうの道路脇の霧の深い雲の様な所で女が手招きしているのを全員で見た。そしてやはり道は先程の地点に戻ってしまっているかの様に変わり映えしていない。

 助手席に座っていた友人の一人が、身を乗り出しながら女を眺めてこう言った。


「あそこは崖だよ」


 白い霧に視界を凝らしてみると、女は確かにガードレールの向こう側に立ち尽くしていている様で、その先は崖になっていた。

 それから恐ろしい事に一行は、車を降りてその白い女に、一体なんなのかと聞いてみようとしたという。

 そこに浮かんだ女の方へ向かって行くが……何故か、女の姿が近づいて来ない。

 歩けども歩けども、どういう訳なのか女との距離が縮まらないのだとか。


 ようやく思い直した一行は車に戻って車道を走り始めた。するとすぐに霧が晴れてきて、もう女も現れず、目的地へと辿り着けたのだという。

 神聖な山は特に、怪奇と隣り合わせなのかもしれない。

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【実話怪談を収集しています。心霊、呪い、呪物、妖怪、宇宙人、神、伝承、因習、説明の付かない不思議な体験など、お心当たりある方は「X」のDMから「渦目のらりく」までお気軽にご連絡下さい】 *採用されたお話は物語としての体裁を整えてから投稿致します。怪談師としても活動しているので、YouTubeやイベントなどでもお話させて頂く事もあるかと思います。 どうにもならない呪物なども承ります。またその際は呪物に関するエピソードをお聞かせ下さい。 尚著作権等はこちらに帰属するものとして了承出来る方のみお問い合わせよろしくお願いします。
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