霊感
霊感
大学を出て企業の受付に就職した私は、同じ受付の川嶋先輩に良くしてもらっていました。
川嶋先輩は私よりも五つ歳上で、凛とした感じの大人の女性といった風で、私も川嶋先輩の事を好いていました。
ある日の週末、仕事終わりに駅の近くで川嶋先輩と二人でお酒を飲みました。その時に川嶋先輩が頬を赤らめてこんな話をするのです。
「私ね、見えるの、そう。霊みたいな物が昔からね」
その話にゾッとした表情を浮かべると、川嶋先輩は興が乗って来たように饒舌に語り始めます。
「あの田辺部長ね。私すれ違うときいつも身震いしちゃうの……あの日と最近離婚もしたし、色々ついてなかったでしょ? あれね、女の霊が憑いてるからよ」
カウンターに肘をついて川嶋先輩はジョッキを口元に近づけました。
「川嶋先輩は、どんな霊が憑いてるかもわかるんですか?」
私が尋ねると川嶋先輩は得意そうな表情でビールを飲んで言いました。
「うん、昔からね、見えるみたい。あはは、大丈夫大丈夫! あんたには憑いてないから」
そう言って快活に笑う川嶋先輩の直ぐ背後に、暗い表情で恨みがましく睨んでいる兵隊がずっと居ることは、川嶋先輩は気付いていなさそうでした。
私が入社して初めて川嶋先輩に会ったときから、彼はずっとそこで彼女を睨んでいます。




