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終戦記念日

   終戦記念日


 心霊なんて信じないけどさ、

 ……それでも俺は人生で一度だけ心霊体験をしたよ。

 それは小学校高学年の頃、母と二人での日帰り旅行で、フェリーに乗って〇〇島に行こうとした時の話なんだけど。

 大して長い話じゃないよ、うん。それと、俺には学がないから、なんか、言葉とか間違ってたらごめんな。


 それはまだ昼頃の明るい時で、快晴だったと思う。フェリーターミナルに辿り着いた俺と母は、海に向かって突き出した形の船着場に向かって歩いてた。前方には既にフェリーが停まってた。ワクワクが止まらなくなった俺は、母の手を引いてグングン前に引いていく。周囲にはポツリポツリと、多くはないけれど観光客の姿があった事を覚えている。


「戦争の時はね――」

「あら、こんにちは」


 俺は母が誰かと話しているのに気が付いて振り返った。するとそこに、母にピタリと寄り添う位の距離まで接近した老婆の姿がある。


「だからねぇ、大事にせにゃあかんのや」

「はいはい、そうですね」


 あーあ、変なお婆さんに絡まれてるわ、と子供心に思った俺は、しばらく小難しい話を続ける母の手を引いた。顔なんてあからさまに不機嫌そうにしていたと思う。俺の内心に気付いた母は、老婆の話を途中で断って俺の所にまで駆けてきた。


「もーっ、早く行こうよ! なんなのあのお婆さん!」


 俺がそう言って頬を膨らませていると、母は俺の歩みに早歩きで並走しながら、こう言った。




「あれ幽霊だよ」




「……ぇ?」


 振り返ると、一本道の筈の船着場に老婆の姿は無かった。


 あまりにもハッキリとした姿形でそこに居たので、今でも信じられないが、母にその話をしてみると、その日は丁度終戦記念日だったと聞いた。



 

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【実話怪談を収集しています。心霊、呪い、呪物、妖怪、宇宙人、神、伝承、因習、説明の付かない不思議な体験など、お心当たりある方は「X」のDMから「渦目のらりく」までお気軽にご連絡下さい】 *採用されたお話は物語としての体裁を整えてから投稿致します。怪談師としても活動しているので、YouTubeやイベントなどでもお話させて頂く事もあるかと思います。 どうにもならない呪物なども承ります。またその際は呪物に関するエピソードをお聞かせ下さい。 尚著作権等はこちらに帰属するものとして了承出来る方のみお問い合わせよろしくお願いします。
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