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蚊
105.蚊
俺は寝付きが悪い。その日もそうだった。
暗くした寝室でボーと目を瞑っていると、ようやく眠気が来た。眠気に任せて身を委ねていると。
プ~~ン
蚊が近付いて来た音に耳元を打った。
電気をつけて憎い宿敵を捜すが、いつまでも見つからない。
鬱陶しいと思いながら、電気を消し、蚊取り線香をつけて再びに寝直す。
プ~~ン
とても苛ついていた俺は、思いっきりに自分の耳元を叩いた。
するとどういう訳か、俺の耳に叩き付けられる予定だった掌に、生暖かい肌の様な感触があった。
「いった~~い」
そう声がして電気を付けたが、何も見つからなかった。
その日は眠れなかった。