風呂掃除
風呂掃除
私には、ある朝不意に遭遇した、忘れられない体験があります。
私は、古いアパートの二階の端の部屋で一人暮らしをしていました。
ある朝、ふと思い付いた私は、トイレと風呂が一緒になった、ユニットバスの浴槽の掃除をすることにしました。
そのまま一緒にシャワーも済ませてしまおうと思い、私は眼鏡を置いて服を脱ぎました。
先ずは掃除を済ませようと思い、シャワーを出して浴槽を濡らします。
「あれー?」
何時までも水の残る、異様に水捌けの悪い浴槽を不思議に思って、浴槽を覗き込むと、水が流れていく穴に、何か白く丸い物が見えました。
はて、何か昨晩落としたのだろうか、と思いました。
私は非常に視力が悪いので、そのまま浴槽に入って、しゃがみこんで穴を覗き込んでみました。
未だにある白く丸い物が、近づくにつれて徐々に鮮明になっていきます。
排水口まで三十cm程の距離になり、それが仔細見えるようになった時、私は浴槽にひっくり返りました。
脂ぎった瞼。その間の白い眼球。それが一度パチリと瞬きをしたのです。
慌てて浴槽を飛び出して、服を着て実家に逃げ込みました。
直ぐに私はそのアパートを引っ越しました。あの件があって以来、ユニットバスの扉は開けませんでした。




