表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一風変わったサバイバルゲーム  作者: サヌキノミヤツコ
3/4

第一部 2話 『これが現実、これが自然界』

もう貯めがなくなりました(笑)

サバイバルに必要なのは判断力。それが生死を分ける重要なことだ。それを無くしてこの先は生きていけない。


「よし、皆落ち着いたな」


「ああ」


「うん」


数人の反応を確認した後に本題に入る。


「俺達が生きていくには水、食料、寝床の3つが必要だ。食料や寝床がなくとも一日は生きることができるけど水はこれから24時間以内に見つけないとヤバい。最悪死ぬぞ」


明るくなったことは良いが楽観しすぎては困る。ここで現実をもう一回叩き込む。死という単語を聞いて皆、唾を飲むのが分かる。


「この乾燥具合をみると雨は期待できない。だからこれから水場を見つけるために移動する。あそこを見てくれ。ここからだと遠くて見辛いが目が悪くなきゃ動物がいるし草木が青々としているのが見える」


皆が絶望している間に俺と薫、碧人は周囲を見渡していたのだ。そして、目が良い碧人がそこを見つけた。あそこに水源がないと俺達はジ・エンドだとはさすがにネガティブすぎなので言わないがはたしてどうだろうか。全てはそこで決まる。


「水を確保した後、次は食料班、寝床班に別れる。まぁそれについてはまた後で話す。何か質問はあるか?」


「無いようなら行こう、陽が暮れ始めたら野生動物も活発になる」


こうして俺らは目的地に黙々と進む。皆ピクニック気分で元気に友達同士で話しているが俺と薫は正直冷や汗ダラダラだ。数分歩いていると


「蒼真君、何で蒼真君は色々と知ってるの?」


クラス1番の美人さん呉屋瑠花が尋ねてくる。その口調だと精神面はまだ大丈夫そうだ。本当の戦いはこれからだろうに……。


「親父がワイルドでな、3回サバイバルをしたことがある。1回目は小4の時山の中で道具を持って3日間生活、2回目は小6の時山の中で何も持たずに1週間生活、3回目は中2の時アメリカのアリゾナ州で何も持たずに2週間親父とプロとで生活した」


「すご…蒼真君がついていれば大丈夫そうだね」


「はは、ありがとう。昔は憎んだが今となっては親父に感謝してもしきれないな」


そんな会話も普段の生活では考えられない直射日光と猛烈な暑さで数キロ歩いたところで皆疲れて途切れ始める。段々と青々としてきているから後もう少しのはずだ。みんな持ちこたえてくれよ……?


「暑い……」


「喉渇いたぁ……」


そろそろ喉が渇く頃。もし水が無かったらどうしようと脳裏をよぎる。人間、目的があれば、希望があれば頑張れるがそれが頑張った上で無かったら?メンタルが壊れるのは容易いだろう。無論俺とて。


しかし、その心配は無かった。俺らがたどり着いたのは大きな湖だったからだ。


「よし、第一目標クリアだ……」


「み、水ぅぅ!」


「おい待て、谷島!」


皆と共に喜ぼうとした瞬間に一人が湖に突っ込みに行く。谷島だった。普段運動しない彼女は余分に汗が出て喉が渇いていたのかもしれない。俺の制止も虚しく制服を着たまま湖に飛び込む。


「早く皆もおいでよ!こんなにギャッ!」


谷島は水の中にいきなり吸い込まれた。彼女を水の中に引き込むのにチラリと爬虫類の尻尾が見える。


「馬鹿が!ワニがいることを知らないのか!?」


俺はすぐそばにあった木の枝を取る。幸いにもその枝の先は鋭い。これで一瞬でも…ワニの気が引けて口を離せばあるいは……!俺も湖に飛び込み顔を突っ込む。良かった谷島のデカイ体がワニを苦戦させててるようでまだ食いちぎられてない!


「谷島!ワニが口を開けた瞬間に陸へ逃げろ!!」


一旦顔を上げてそう伝えてからもう一度顔を突っ込む。ヤバい!野郎湖の奥へ!!


「…ッッ!」


木の枝をワニの頭に刺す。それでも離そうとしないので目を刺す。すると体を震わせ標的を俺に替えて襲ってくる。そのすきに谷島は逃げる。俺も早く逃げないと!


「プハッ!ハァハァ…谷島は!?」


なんとか逃げ切れて湖を出る。そこは辺り一面谷島の血だらけになっている。相当な出血量で谷島は腹を食われて贅肉でなんとか耐えているようだった。回りはただ動揺している。応えてくれたのは薫と碧人だけ。


「血が…血が止まらないんだ!」


「ワイシャツを千切って止血しているがこれはもう……!」


噛まれたところを懸命に強く圧迫しているがそれでも血は止まらない。


「…荒瀬君……馬鹿な私を助けてくれて…ありがとう……」


「ああ、礼は後でいいから何か考えるんだ!そうだ楽しいことがいい、サバンナは肉の宝庫だ!だから……」


谷島は掠れた声で礼を言う。くそっこいつ今にも意識が飛びそうだ!何とかして意識を保たないと!


「それから…桐島君と草野さん……みんなも…いつも板東君から…守ってくれて……ありがとう」


「た、谷島さん!いいの、いつものことでしょ?」


「はっ!そんなの当たり前だろ?俺達は仲間だ!」


「皆も谷島に話しかけて意識を保たせるんだ!」


俺達自身も震えた声で懸命に話しかける。死ぬな、頼む…耐えてくれ……!


数分後、谷島は皆に看取られ目から涙を流した状態で息を引き取った。食料も寝床も見つかってないが目の前で人が、クラスメイトが死んで俺らは探す気にもなれずに夕暮れまで沈黙していた。

2話目で死人がでるというかなり高スピードなストーリー。ここまで読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ