表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無貌の王  作者: いー
4/5

転移

今回はかなり短めです

第4話


「ナナシーこれじゃ日が暮れちゃうわよー」


「神様ー早くー!!」


「……うへぇ」


突然の急展開。というか絶賛登山中

しかも周りは極楽鳥が死肉を狙って飛んでる腐山

まさか異世界初の冒険がこんなお先真っ暗なスタートを切るとは夢にも思わなかった。

何故こんな場所で登山をする羽目になったのか…

少し記憶を振り返って見ようと思う。



「待ってください!!」

呼び止められる声に少し驚いた

その声が余りに切羽詰まった様子だったからだ。


「なんでしょうか……えぇ…?」

目の前に居たのは先ほどいた人形のような少女ではなかった。

……いや正確にいうなら少女自体は同一人物で正しいのだが

さっきまでの全く生気の感じられなかった顔から一転して

なんとも生気に満ち溢れる表情をしていたからだ。


具体的言うと顔中を涙と鼻水でぐしょぐしょにして僕のズボンの端を掴んでいた。


「私も連れてって下さい!もうあんちきしょうにこき使われるのは嫌なんです!」


長い間ろくに人と会話をしていなかったせいで何時の間にか耳が駄目になっていたようだ。

まさかさっきまで儚げで無表情だった美少女が「あんちきしょう」なんてまさかね。


「おねがいします!なんでもしますから!えっちぃ事以外!」

「なんでもじゃねえじゃねえか」


しまった、つい乗せられてしまった。

なんだろうな。この自分の憧れていたクラスの女子の残念な趣味を知ってしまった時の

様な喪失感。


「さっきまでの無口キャラはどうしたんですか?」


「いやぁさっきまでの私、あの野郎に役職と名前で脳味噌を雁字搦めにされてたのよねー」


「雁字搦めって……またなんでですか?」


「うーんなんでって聞かれると説明が長くなるのよねー、まぁそこら辺もまとめて

向こうで話すわ、さ行った行った!!」


「ちょ、押さないでください。ていうか無理やりにでも付いてくる気なんですね」


「もちろん!」


その時見せた彼女のはにかんだ笑いはなんというか。

さっきまでの人形のような表情よりはるかに魅力的に見えのだ。


「分かりましたから押さないでください!」


―こうして僕は異界へと転移する。

――これはあの日全てを諦めてしまった僕が

自分の名前を取り戻す、そんな物語だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ