生前
初めまして。投稿者のいーです
初めての投稿ゆえ至らぬ点が多々あると思います。
御目汚しにならなければ幸いです
間違え矛盾等ご指摘頂けると投稿者が泣いて詫びます
子供の頃、それはまだ幸せだった頃。
幼かった少年は母に尋ねた
ママ、僕の名前ってどういう漢字なの?――
母は最初少し驚いた顔をしたがすぐに優しい顔になり教えてくれた。
もう自分の名前に興味を持ったの?偉いわね…アナタの名前はね……―――
昔の夢を観た。ソレは家族が幸せだった時の記憶。
少なくとも僕がそう感じていた時の記憶だ。
――今日も起きてしまった。そんな憂鬱な気持ちと共に目が覚めた。
目覚めてしまった以上は生きる為の行動をしなくてはいけない
「おはようございます。」
そう1人誰も居ない空間に独りごちベットから起き上がった。
まず起きて初めに僕が取った行動はまずパソコンを立ち上げ通信校からのネット教材を開く事だった。
僕は高校に通っていない
いや、正確には通うのを辞めてしまったのだ
理由は何処にでもある酷くつまらない理由だ。
イジめ――
暴力を伴う物では無かったが敢えて掘り下げる事でも無いので割愛しよう。
高校を中退してしばらくした時
あの人から久しぶりの連絡が来た。
勝手に学校を辞めてしまったから
さぞ怒られるのだろうと思って出た電話からは以外にも優しい声音だった。
「久しぶりだな…学校辞めたのか?…もし良かったら今から食事でもどうだ?」
会う気にはなれなかった。
別にあの人が嫌いと言う訳では無い
ただあの人と会うと必然的に思いだしてしまうのだ。
もう二度と思い出したくない記憶を――
自分の厚顔無恥を心で詫びつつも断りをいれようとした時――
「やっぱり会うのは嫌か……?」
その言葉を聴いた時何故か自分の口から
「あ……いや。」
と言う言葉が出てしまった。
どうしても言葉の続きが出て来なくて詰まって居るとあの人はまた優しい声音で言った。
「無理をしなくて良い……高校の事も心配するな。ただもし気が向いたら通信校でも良いから。高校は卒業しておきなさい。今の時代、中卒では就職も厳しいだろうからな。」
電話越しにそんな事を言われた。
どうして?と言う疑問で言葉が詰まってしまい
会話が途切れてしまう。
だが今度は向こうは敢えてこっちの言葉を待ってくれているようだった。
自分の中で言いたい事を纏めて恐る恐る言った
「怒って無いの?」
と。
言った後で後悔する。怒って無い筈が無いのだ。
入学金や毎月の学費を払っていたのに。
肝心の僕が何の相談も無くその学校を辞めてしまったのだから。
だが―――
「あぁ……怒って無いよ。何か理由があったんだろう?お前が悩んでいた時に近くに居てやれなかった私にも責任は有る。悪かったな……」
その言葉を聴いた時不意に言葉が溢れた
「そんな事無い!」
突然の僕の言葉に向こうも少し驚いた様だったが黙って続きを促してくれる。
「僕ね。学校で無視をされていたんだ。
初めは良く話をしていた友達がだんだん距離を置くようになっていって。気付けば学校で誰にも相手にされなくなってた。
先生に話しても腫れ物を扱うみたいに当たり障りの無いアドバイスばっかりでさ……どうしたら良いのか分からなくなってたんだ……」
ついあまり喋りたく無かった学校での事をペラペラと語ってしまった。
恐る恐る反応を伺って居るとあの人は
「何か無視をされるのに心当たりとかは有るのか?」と聴いてきた。
僕は「友達と喧嘩しちゃって。そこから……だと思う。」
そう応えた。あの人は
「そうか。辛かっただろう……喧嘩の理由までは聴かん。話たくなったらいつか話してくれ。」
ソレは僕を気遣っての配慮だった。
その行為に甘えつつその話題は終わった。
それからの会話はお互い思いの外スラスラと会話が続いた。そして――
「む……つい長電話になってしまった。
時間を取らせて済まなかったな……元気でな。」
そんな言葉を最後に電話を切ろうとした時
僕は少し慌てて言った。
「今日は電話して来てくれてありがとう。
またね…父さん。」
その言葉を聴いた父は少し黙った後
「あぁまたな。おやすみなさい」
と言う小さな約束を最後に電話を切った。
―――まぁ……そんな経緯も有り
せめて通信高だけでも卒業しておこうと言う事で
現在勉強中なのである。
ある程度の課題を片付け朝食にしようと思い
戸棚を開けるとある問題に直面した。
「しまった。そう言えばインスタント切らしてたんだった……」
仕方なく近くのコンビニまで買い出しに出かける
アパートから出たときふと思い出す。
「あ、パソコンの電源切り忘れた。」
別に戻っても良かったのだが自分の中の惰性が勝ってしまった
「ま、いっか。」
――後にして思えば。この時に面倒臭がらずに戻っていれば後の結果は変わっていたのかも
しれない。
……いや。やっぱり結果は変わらなかっただろう
先延ばしになっただけだ、だってこの頃僕は生きている事に絶望していたのだから。
コンビニ前の横断歩道を赤信号で待っていると
今この世で一番出会いたくない人物を見つけてしまう。
僕が学生の頃の、喧嘩をした奴だ
向こうもコチラに気づいたようだが御互い今更何をする事も無いだろう。
そう思い来た道を引き返そうとした時何故か向こうが慌てた様子で此方に駆け寄ってくる。
まだ赤信号だった横断歩道を。
――そこからは何もかもがスローモーションの様だった。
突然飛び出して来た元友人――
甲高いブレーキ音――
何故か元友人を助けるように横断歩道から押し出した僕――
本当に何故だろう?なんで僕は憎いとすら思っていた筈のアイツを庇うような
事を……
そこまで考えたとき僕の思考はブラックアウトしてしまう。
深い…深い海に沈んでいるような感覚だった。
僕は死んでしまったのだろうか?……いや、多分死んでしまったのだろう。
あのスピードでトラックに跳ねられて生きていられる程僕の体は頑丈ではない
なにより自分が死の淵より這い上がってこられる程の胆力が有るとも到底思えない。
――あぁだが、
「またねって約束。守れなかったなぁ…」その言葉を最後に深く沈んでいく。深く…深く