二人の距離が初めてゼロになった時
「はぁ〜なんでこんな事になったんだか」
俺はスマホの落とし主と待ち合わせで、駅前のベンチで一人ため息をつく。
あれから、電話を切られてどうすればいいかと悩んだが、公衆電話からの着信だったから折り返す事も出来ず、とりあえずスマホを持って返った。
そして、夜、冷静になってから、自分の部屋でどうしたものかと思いながら、机の上に置かれたスマホを見て、連絡先でも見ようかなと思った時、またしても電話が鳴った。
その番号は家電からのようで、俺が少し戸惑いながらも、電話に出ると電話の奥で聞こえた声は昼間の女の子だった。
「つ、次の日曜日、朝10時に駅まで行くんで、待っててください! よろしくお願いします!」
出た電話からその言葉が聞こえると、俺が言葉を返す間も無く、電話は切れてしまった。
呆然とした俺だが、電話をかけ返すのもなんだか気まずく、それに、このスマホを早く返しさないといけないと思ったのと、たまたまその日曜日はサッカーの練習が休みだって事で言われるがまま駅に行く事にしたのだ。
それにしても、待ち合わせをしたのはいいけど、名前すら聞いてないし、それどころかお互いの特徴も知らないし、会う事なんて出来るんだろうか?
「あ、あの〜……」
すると、突然声をかけられ、少しびっくりしながら振り抜くと、そこには黒髪で透き通るような白い肌で、少し幼さな残る顔の女の子がいた。
見るからに同じ年くらいのようだ。
「あっ、はい。もしかしてスマホの持ち主?」
女の子が少し戸惑っていたので、俺から声をかける。
「そ、そうです! この度はすいませんでした!」
俺が声をかけた事で余計に慌てて頭を下げる。
「いやいや、いいって。はいこれ」
そう言って俺はスマホを差し出す。
「あ、ありがとうございます」
すると、女の子はスマホを受け取った。
ふぅ〜これでひと段落だな。
「じゃあ俺はこれで」
「あっ、ちょ、ちょっと待ってください! ご飯でもどうですか!?」