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☆落とし物

視点が変わっています。

視点が変わる時はタイトルに「☆」をつける事にしますm(__)m

「えっ!? スマホがない!?」


 受験が始まる前に行われる修学旅行中、私はスマホがないのに気付いた。


「えっ!? なんで……なんで!?」


 私は一人でパニックに陥る。

 今は集団で移動中。

 そんな中で一人勝手な行動は取れない。


 本当なら、誰かにスマホを借りて自分のスマホに電話したら良いんだろうけど、私にはそんな仲の良い友達はいない。


 私、市川結愛いちかわ ゆあ高校三年で転校して来てたのと、元々転校が多くて人付き合いが苦手だったのもあって、話すのが苦手だった。

 だから、そうやって話しかけられてもうまく話しを返せないでいるうちに、誰も話しかけてくれなくなって一人でいる時間が多くなった。


「どうしよう……」


 周りのみんなが楽しそうに話している中、私は一人焦る。

 私は物覚えも悪くて、スマホのロックを忘れる事があって、何度もロックを忘れてしまう事があった。

 だから、私はスマホにロックをかけていない。


 もし、落としたスマホを悪用されたら……。

 しかも、待ち受けは密かに寂しがり屋いうのを示すようなウサギ……もちろん、ウサギは好きだし、一人が寂しいってのが、共感できるから好きだけど、そんなのを誰かに見られたら……。


 急速に私の心の中に不安が広がる。

 どうしたら……どうしたら……あっ!

 私は一つ思い付いた。


「せ、先生、トイレ行って来て良いですか!?」


 私は勇気を振り絞って声を上げる。

 みんながキョトンとしながら、送ってくる視線に耐えていると、先生が「分かりました、気をつけて」と言ってくれた。


 その言葉を聞いて、他のみんながどんな反応をするのかを確認するのが怖くて私はそれを見ずに走り出した。


 そして、私はトイレに向かうふりをして、公衆電話を探す。

 修学旅行と言えど、今の移動時間は制服だから、スカートがめくれないように気をつけながら走る。


 うっかり者の私だから、いつかこういう日がくるんじゃないかと、自分の番号はメモしてある。


 だから、公衆電話から電話して落とし主と話をすれば……そして、交番に届けてもらえれば……。


 私は必死に公衆電話を探す。


 でも、ない……ない……ないっ!!


 ケータイ、スマホが普及した今となっては公衆電話という存在は少ない。


「なんで……」


 私は焦りながら必死に探す。


「あっ!」


 すると、視界の先に一つの公衆電話を見つけた。

 私は必死に急いで駆け寄ると、カバンの中の財布から百円を取り出して、公衆電話に入れ、自分のスマホの番号をダイヤルする。


 誰か出てくれますように……。



「も、もしもし?」


 すると、思いのほか、私がかけた電話は予想外に早く誰か出た。

 まとまりきらない思考で聞こえてくる声から持ち主を考えると、どうやら若い男の子のようだ。


「えっ? あっ、そ、それ! 私のです! 返してください!!」


 そして、元々余裕がないのにそんな事を考えたのと予想外の展開が重なり、私は支離滅裂な言葉を返す。


 えっ、いや、違うの!

 予想外の事が続いて……


「はぁ?」


 すると、次に返ってきた言葉は不機嫌な声だった。

 自分がやってしまったとは言え、思わぬ相手の第一声に、私はパニック気味になる。

 でも、ちゃんとしなければと思い、奥歯を噛み締めて気合いを入れる。


「あっ、いえ、違うんですっ!! ちょっとびっくりしてしまって……」


 気合いを入れたのも虚しく、私の声は尻すぼみになる。


「あ、あぁ〜ゴメン。これ君のスマホ?」


 すると、電話の相手は私の対応に怒りもせず、言葉を返しくれた。


「そ、そうです! 修学旅行の途中で落としたみたいで……」


 そのおかげで、私は少し冷静を取り戻した。

 この人、良い人そう……。


「そうなんだ。じゃあどうしよ? 交番届けようか?」


「あっ、いえ、持っててもらっていいですか!? 今度の日曜に取りに行きます!」


 そんな事を思っている間に言葉が返って来て、焦った私はまた、パニックになって慌てて言葉を返す。

 いや、取りに行くって!?


 私は自分の言葉に自問自答して、後悔する。


「はい?」


 電話から聞こえてきた反応は、予想通りだった。


「だ、ダメですか?」


 でも、考えもまとまらず、引くに引けない私は何故か、取りに行くって線を押してしまう。


「いや、そういうなら別にいいけど……」


「じ、じゃあお願いします! また連絡します!」


「ちょ、ちょっとーーっ!?」


 私はどうにかして流れに言葉を任せて告げると、電話は切ってしまった。


「えっ、えっ、えーーっ!? どうしよう!?」


 電話を切った後、私は一人叫んだ。


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