ワケあり子猫
「なんなんですか、あなた達」
見たところ、結婚式の時の奴らではなさそう。
じゃあ、いったいなんのご用で…?
「別にお前に興味はねえ」
ぺっといい放つ。
「俺が…いや、俺ら、が用事あんのはそこの猫だ」
猫…リアのこと、だよね。
リアのほうをふと見ると、うなだれている。
なにか訳ありっぽい。
しかもさらっと俺ら、と言った。
そこら辺の木とか茂みに隠れているんだろう。
「猫は大人しくゲージの中に入ってればいいのになぁ。抵抗する気がねぇんだったら、許してやってもいいけどよぉ?」
パチン、男が指を鳴らす。
すると、思ったとうり他の男達がぞろぞろと出てきた。
ざっと30人。
意外に多い。
戦闘になったら、絶対死ぬ。
リアはうなだれたまま。
「ん?返事がねぇってことは抵抗する気は無しってことか?」
男がリアの方へどすどす近づく。
しかし、それは叶わなかった。
リアとの距離、後7mのところで、男が盛大に吹き飛ぶ。
周りの男はなにがなんやらって感じだけど、私には分かった。
リアが目にもとまらぬ速さで平手打ちをかましたのだ。
当然顔面に。
「お、おい、抵抗すんのか?」
平手打ちをかまされた男は、すっかり勢いを失っている。
驚きながら男達が襲い掛かってくるが、一瞬にして地面にひれ伏す。
あれ?この光景どっかで見たような……?
あ、結婚式の時か。
あの時の魔王さん凄かったなぁ~。
いやいや、ほのぼのしている場合ではない。
「リア、な…」
「ロベリアには関係無いにゃ。ゴメンにゃ、1人で城に帰っててほしいにゃん」
ばっさり切り捨てられた。
リアにはリアなりの事情がある。
それはちゃんと分かってる。
でも、聞きたい。これだけは。
その場から去ろうとするのを引き留める。
「ちょっと待って。あの人達は何なの? リア、あなたは一体……?」
「リアはリアだにゃん。それし以上でもそれ以下でもない。ただ、これだけは教えとくにゃ。」
「猫族は代々から伝わる伝統的な部族。数が少ない割には少数精鋭。各個人の力で破滅を逃れてきたにゃ。でも、平和になった世の中じゃ、いくら強くても意味がない。そこに目をつけた人身売買屋がこぞってわたしらを襲った。数が少なく希少だからめっちゃ儲けるらしいにゃん。後はまぁ……そういうことにゃ」
そんな……つまりリア達猫族は人身売買されていて、さっきの男達はその関係者……ということになる。
なんで私の周りは皆不幸になっていくんだろう。
やっぱり、悪魔の子、だからかな?
人界での生活がフラッシュバックする。
「悪魔の子」
「あんな子の相手になんかするな」
思い出すだけで、胃が痛くなる。
日差しが照りつけるアスファルトにはリアの立ち去る足音が無惨に響くだけたった。