大脱走
「ロベリア~早くするにゃ~」
ぴょこぴょこと10m先でリアがジャンプしながら手を振る
「はぁ、はぁ…ちょっとまってよ…」
リアが考えた脱走計画はこう。
まず、事前に入手してあった城の地図から脱走口を探す。
いいルートが見つかったら次の日に脱走する。
まぁ脱走と言っても大事にならないように、少し観光したら庭に帰るんだけど。
そして今、草花を掻き分け脱走中です。
「はぁ、はぁ…私猫族じゃないし、そんなに足速いわけじゃ無いから、もう少し、ゆっくり、お願い」
息を整えながらリアのいる場所に近づく。
「にゃはは、ごめんにゃ。でも急がないと看守さんに見つかるにゃ」
リアはその場でかけっこの真似をしながら言った。
「だから、もうちょっと頑張るにゃん」
確かに急がないと看守さんに見つかってしまうだろう。
なにせ10分だけ警備が手薄になる時間を狙って来ているのだ。
「ホントにバレないよね~?」
はぁ、はぁと息を切らしながら聞く。
「きっと、多分、まぁまぁ大丈夫にゃん!」
全然大丈夫じゃないな。
行く先が案じられる。
更に5分ぐらい歩くと、街の喧騒が聞こえてきた。
やっと、出口だ。
最後の草花を掻き分けると、そこは何日か前に見た洗礼された景色。
「わぁ~」
まだ全然新鮮な光景だから、無意識に感嘆が口に出た。
でも、何度見ても今みたいな声を出してしまうだろう。
だって、何度見ても多分飽きないだろうし、むしろお城よりこっちに住みたいって思うもの。
「さあ、ロベリア、思いっきり楽しむにゃんよ~」
それから、アイスクリームっていう冷くて甘い物を食べたり、電車っていう前に見た車よりも速くて大きい物に乗ったりした。
まだ、興奮が収まらない。
心のわくわくドキドキが止まらない。
それだけ凄い街だった。
でも、逆に疑問に思うことが沢山ある。
例えば、ビルを建てるのに木でもレンガでもないとなると、どんな素材を使っているのか、とか。
他には、アスファルトなんて人界にいた頃は見たことも聞いたこともない。どうやってアスファルトのことを知ったのか、などなど。
そして最大の疑問は、なぜ、こんなに発展しているのか、ということ。
考えてみれば、人界がアスファルトの存在に気付かない訳ない。
なにせ、最高峰の技術と知恵で魔法を産み出したのだから。
魔法を産み出す位なら、アスファルトの存在になんて一瞬で気付いてもおかしくはない。
むむむぅ、考えれば考えるほど疑問が次から次へと……。
でも、リアや魔王さんに聞いたら、きっとそんな常識も知らないのかよって言うよね。
いや、言われないとしても、なぜか聞くのは躊躇われるけど。
この疑問たちはお城の大図書館にでもいけば分かるだろう。
リアが突然クルリとターン、
「ロベリア、今日は楽しんでくれたかにゃん?」
クレープを片手にオレンジジュースをもう片方に持ちながら聞いてきた。
どんだけ食べるのこの子…。
「うん、もちろん。なんかわざわざありがとね」
「どーいたしましてにゃん。っと、もうそろそろ帰らないとヤバいにゃ」
ホントだ、次の看守さんが手薄になる時間は15分後。
そろそろ行かないと。
「よし、急ごう」
私が脱出してきた秘密の出入口へ足を伸ばすと、
「おい、まて小娘」
突然、柄の悪い人に声をかけられた。