少女と猫耳
あの式での事件から数日。
私はお城から出られないでいた。
「はぁ~。お城の中だけじゃつまんないよ~」
ため息とともにポロリと不満が口に出る。
あの事件のおかげで命の危険があるとされ、事が落ち着くまで外出禁止令が出されている。
これじゃ人界のお城にいたときと一緒じゃないの。
せめて1時間いや30分だけでも観光がしたいのに、それすら駄目だなんて。
ここに来てからまだ観光やちゃんとした散歩もしていないなんてあり得るの…?
まぁ庭に出ることが許されているだけありがたいけど。
というわけで私は今お城の庭にいます。
私がユーラとよくいた人界のお城のより少し狭いぐらいのお庭。
狭いと言ってもそこらへんの民家よりはかなり大きいんだけど。
歩く度にザッザッと音と立てる芝生が気持ちいい。
どこからか吹く風が花々を揺らし甘い香りが庭を包む。
ここにユーラがいたらなぁとしみじみ思った。
私が庭でまどろんでいると、突然ガサガサと茂みの方から音がした。
その音はどんどん大きくなって…
「にゃっほ~、お嬢様~♪今日も元気にゃんか~?」
同い年位の猫耳少女が飛び出してきた。
少女は服や顔や頭に付いた新緑の葉っぱを払い落としてにゃははと笑った。
「なんだ、リアか…驚かせないでよ。それとお嬢様は止めてって言ってるでしょ」
「にゃはは、ごめんにゃ」
リアは悪びれずに笑う。
この子は、ハベナリア・アラジータ。
本人曰くハベナリアなんて可愛く無いし、猫族っほくないからリアと呼んでほしいとのこと。
リアとの出会いはお城に来てすぐ。
お城の中を見て回っていたら、今の様に飛び出してきた。
最初は勿論驚いたけど、猫耳という人界にはない要素が飛び込んできて、驚きよりも興味が勝った。
その後なんやかんやで仲良くなり、たまにこうして顔を合わせる。
本当はお城には魔王族しか入っちゃだめなんだけど、リアはお忍び、つまり内緒で私に会いに来てくれている。
嬉しい限りだ。
「……今日も城から出ちゃだめなのかにゃん?」
リアは少し寂しそうに言った。
「うん。しばらくは出れそうにないかな…。はぁ~、つまんないよ~」
もう一度、ため息をつく。
「ボクもつまんないにゃんよ~……。そこで!!」
リアは薄い胸を張って、
「ここからちょっとだけ脱走しないかにゃん?」
自信満々で言った。
ぜひ感想や評価をお願い致します