不幸せな結婚式
「あなたは妻、ロベリアを愛すると誓いますか」
ついに結婚式当日。
ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞い、町は一種のお祭りと化している。
そして、タキシードに身を包んだ魔王さんはとってもカッコいい。
条件として仕方なく、と言うことになっているけど、こんなにカッコいい人と結婚出来るなんて、どんなに私は幸せなんだろう。
ちなみに私は、白のウエディングドレスに青みがかった白い百合があしらわれたもの。
魔王さんは気にしなくていいって言ってたけれど、値段のプレートにゼロが何個並んでいたことか。
「誓います」
魔王さんは、私に微笑んで言った。
その笑顔を見ると、胸がドキドキする。
私だけの幸せを噛み締める。
「では、誓いのキスを」
ん?え?
チラリと魔王さんのほうを見ると、驚いた後、顔を真っ赤にして俯いた。
なんか可愛い。
ともかく、これってホントにしなきゃいけないパターン?
好きな人と、キス………え、好きな人!?
ここでようやく分かった。
私はこの人に、魔王さんに一目惚れしたんだ。
魔王さんが放つ言葉や行動に、そして全てに。
魔王さんが私の頬を押さえる。
徐々に魔王さんの唇が近づいてくる。
___ここは、本能に従おう。
そう思って力を抜いた途端、式場の後方から悲鳴が聞こえた。
自然と顔と顔が離れる。
せっかく良いところだったのに…。
全くもう。
私がぶつくさ心の中で文句を言っている間も、悲鳴はどんどん大きく、近くなっていく。
少しして、護衛の隊長が式場に飛び込んできた。
「魔王様、武装集団が十名ほど我々の護衛軍を襲撃、突破しようとしてきています!ここ来るのも時間の問題かと」
「またあいつらか…。全員ここから避難!後は俺に任せろ!」
私がどうしようかとおどおどしていると、魔王さんは手を引いて奥の方へ避難させてくれた。
「ドレスだとあんま避難出来ないからな。ここで待ってて」
魔王さんはそういって元の場所に戻っていった。
しかし、もうそこには武装集団が。
「魔王になってちょっとしただけで、もうご結婚ですか。随分偉くなりましたねぇ。しかもお相手さんがとびきり美人だとか」
武装集団のボスとおぼしき男は魔王さんに言い放つ。
よかった。人界出身なことはバレて無いみたい。
とびきり美人というフレーズは引っ掛かるが。
「どうしようがこっちの勝手だろ。お前こそ調子のってんのか?ボコボコにされたいのか?」
魔王さんも負けじと言い返す。
でも、武装集団の体つきは魔王さんと比べ物にならない位大きい。
戦闘になったら勝てない気がする。
私は体を少しずらして見える所まで移動し、事の成り行きを見守った。