素敵な条件
え?今なんていったの?
周りの群衆は今か今かと私の答えを待っている。
待って待って、ちょとおかしいよ。
これ、プロポーズされたってこと?
いや、条件がどうとか言ってたからきっと仕方なくだよね。
うん、絶対そうだ。そうに違いない。
魔王さんはプイっとそっぽを向いている。
たまにチラチラ目線だけで私を見てくるが、当の私はそれどころではない。
えっとこう言うときなんて返せばいんだっけ…。
以前母がシオンに言ってたのを聞いた気がする。
なんだったっけ…。
あ、そうだ、あれだ。
「条件だったら、仕方ないですよね」
私が絞り出した答えに魔王さんはホッとした様子だった。
周りの群衆は「遂に魔王様に奥様が!」とか言って喜んでたけど、魔王様イケメン発言した女子達は明らかに不機嫌そうだった。
魔王さんは群衆に向けて、
「結婚式は明後日。披露宴はその後20時から行う。ぜひ皆来てくれ」
そう淡々と述べた。
おおーこれが魔王の貫禄というものか。
とてもカッコいい。
でもすぐ結婚式やっちゃうんだ。
手続きとか大丈夫なのかな。
それに人界出身の人をそう易々と受け入れてくれるのだろうか。
すると魔王さんはてくてく歩いてきて、私の手の甲に、キスをした。
途端に周囲が騒がしくなる。
私は耳まで真っ赤になった。
「とりあえず城に行くぞ」
手の甲ではあるが、突然のキスに体が熱っぽい。
魔王さんが言ったこともちゃんと聞き取れない。
「大丈夫か?」
魔王さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
きょとんとした顔もとてもかっこよかった。
待って、顔近い。ヤバいヤバい。
顔真っ赤なのバレちゃう。
「だ、だいひょうぶでふ!」
なんとか声に出すけど、恥ずかしいとカッコいいが混ざりあって上手く喋れない。
魔王さんはやれやれって感じで私の手を握った。
魔王さんの手は、暖かくて私を包んでくれているような安心感があった。
いつまでも握っていたい。
「ほら、行くぞ」
ぐいっと私の手を引っ張る。
ってか歩いて移動するのね。
車に乗りたかったんだけれども。
3分位町を眺めながら歩くと、大きく開けた場所に出た。
そこだけ緑がいっぱいで、猫が気持ち良さそうにゴロゴロしている。
花壇はしっかり整備されていて、色とりどりの花が咲き乱れ、蝶が舞う。
石畳の道が奥の豪華なお城まで延びている。
人界のお城より大きくてゴージャス。
「おお~」
ここが魔王さんが住んでいるお城かぁー。
そして、今日から私の我が家。
夢にも見なかった。
ちゃんとした生活が私にもできるんだ。
これから始まる新しい生活に心踊らせながら始めの一歩を踏み出した。