誰からも愛されない少女
私、ロベリアは魔王に誘拐されている真っ最中です。
でも、それが良いことなのか、悪いことなのか私にはわからない。
だって、ある意味箱入り娘だもの。
____数分前、私はいつものようにただっぴろい庭で花を眺めていた。
時折吹く風は心地よく、キラキラと色とりどりに咲く花々を見ると、心が癒される。
しかし、一緒に鑑賞する友達はいない。
いや、いるといえばいるのだが。
唯一の友達は満開に咲き誇る花々と三歳の時からずっと一緒の青い鳥、ユーラだけ。
ユーラはいつも私の肩の上に止まっている。どうやらそこがお気に入りのようだ。
そして、いじめっこが来たら、ピェーと鳴いて知らせてくれたり、追い払ったりしてくれる。
なくてはならない親友だ。
その時、ユーラが声高く鳴いた。
あぁ、今日もきたのか。
「あ、悪魔の子がいるぞ」
「ホントだ!悪魔の子だ。また一人遊びか。お好きだなぁー」
「しーっ。あんな悪魔の子でもいちようは王族なんだから、王様に聞かれたらマズイわよ!」
本当くだらないと思う。
ほぼ毎日ここに来るのだから邪魔ったらありゃしない。
いや、むしろ毎日欠かさず来ていることを褒めるべきか。
さて、この世界では、瞳の色と髪色で種族__普通の人間か魔族かを判断する。
茶や銀、金など明るめの色は人間。
黒、紺、紫、赤など暗めの色は魔族。
なんでも、昔、悪魔と契約していた人間がどんどんやつれて綺麗だった金髪が黒ずんでいったのが由来だとか、悪い人間は暗い髪が多いからだとか諸説あるが、まあそんな感じで今現在も瞳と髪で魔族か否か判断されている。
私は、王族の娘で、父は金髪碧眼。母も兄も双子のシオンも同様に金髪碧眼。
なのに私だけが黒髪黒目で生まれてきた。
母や父、兄からは毎日悪魔の子と罵られてきた。
しかし、双子のシオンだけが私を尊敬の眼差しで見てくれた。
「ロベリアの髪は艶々で羨ましいです。私も黒髪黒目が良かったです」
口調は母に矯正させられているらしく、お嬢様にふさわしい。
髪と目の色のせいで両親と兄に見向きもされない私と違って、シオンはとても甘やかされている。
新しい服が欲しいと言えばすぐ連れていって貰えるし、欲しい物があれば何でも買ってくれるらしい。
しかし、シオンは私を気遣ってあまりワガママは言わない。
でも、それに対して両親と兄は「悪魔の子の相手なんかしちゃ駄目ですよ」と口癖の様に言う。
なのに王室からは追い出さず、生まれてから今日までずっと晒し者にされてきた。
そんな生活も今日で終わりを迎えた。
それは、馬鹿三人組が帰り、ゴロゴロと芝の上を転がっているときだった。
突如、目の前に1人の青年が現れ、魔王だと名乗り始めた。
ユーラは警戒したのか、ピェーと鳴いた。
にわかに信じがたい話だか、なぜか私は全て真実だと確信した。
「やあ、悪魔の子よ」
「白馬の王子様が迎えに来たぞ」
魔王は本当におとぎ話の王子様見たいに優しく笑った。