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8話 ヤギのステータスを見てみよう

 追手の臭いもなく、俺達はようやく一息ついた。

「ありがとうヤギさん」

(お互い無事でよかったな)

「うん、ヤギさんのおかげだよ」

(あの村以外に人間の住んでいそうなところ知ってる? そこまで送っていくよ)

「ヤダ! ヤギさんと一緒の方がいい!」

(一緒っていったって……いやまあ、そうだな、知らない村にいきなり放り出されても困るか。児童福祉なんて考えられて無さそうだし)

「じどーふくし?」

(ああ俺が昔いたところは、子供がちゃんと育つようにいろいろ制度があったんだ)

「へえ、ヤギの世界って進んでるんだね」

(うーん、まあそういうことにしておこう)


 それにしても俺の身体はどうも変だ。

 胸の痛みはいつのまにか消えていた。ナイフで刺されたところは死にかけるほどの大怪我だったと思うのだが、今は出血もしていない。

 また、いくら勢いがあったとはいえ、人間相手にあんなに大立ち回りできたのはなぜだ。動物は人間より弱いはずだ。

 もしかすると……おれはステータスを確認してみた。


名前 ヤギさん

種族 ヤギ

タイプ アンデッド

レベル アニマルコンパニオン レベル13


筋力 優秀

敏捷 優秀

耐久 --

知力 微小

精神 普通

魅力 普通


スキル 攻撃レベル3、知覚レベル1、跳躍レベル2、知識(ダンジョン)レベル1(+2)、記憶レベル3

アビリティ 大いなる彼方の記憶、武器強化(角)、突撃強化、暗視、嗅覚、スキルフォーカス:知識ダンジョン、主人との絆、呪文共有、アンデッドの耐性、血脈の発露、危険回避、突き飛ばし(初級)、能力上昇


 なんじゃこりゃ!?

 なんかアビリティがたくさん増えているし、レベルがついている。というかタイプが動物からアンデッドになっているし、名前がヤギさんになっている!?


 ん? ヤギさん?

「どうしたの?」

 ステータスオープン!

 これまで少し時間がかかっていたはずのナタリーのステータスの情報が直ぐに頭のなかに流れ込んできた。


名前 ナタリー・ヴォイド・レオタール

種族 人間

タイプ 人型生物

レベル クロスブラッド レベル13


筋力 劣等

敏捷 優秀

耐久 優秀

知力 普通

精神 普通

魅力 卓越


スキル攻撃レベル2、 魔法レベル3、生存術レベル4、知識(自然)レベル2、治療レベル2

アビリティ 武器習熟(初級)、異種族の祖先、二重の血脈、秘術魔法レベル2、獣の相棒、死越の絆、触媒省略、魔人の肌


 んー、獣の相棒か。そういえばあのハンターもそんな名前のアビリティ持っていたっけ。


 獣の相棒:タイプ動物、または虫と絆を結びコンパニオンとすることができる。対象は特殊クラス、アニマルコンパニオンを得て、主人のレベルと共に成長する。


 これがあの犬が俺を圧倒した理由か。あの犬は獣の相棒のアビリティで俺と違ってレベルを持っていたんだ。

 一気にレベルが上がったのは、あの司祭を倒したからか。なんか偉そうだったしレベルも高かったんだろう。


 死越の絆:魔人のみ習得できる。獣の相棒のタイプをアンデッドに変更する。アンデッドは耐久力を失い、耐久力に魅力を適応する。また魅力を12に変更する。


 これで俺は生き返ったのか。いや今もどうやら死んでいるようだけど。

 にしても不思議だ。アンデッドが耐久力を失うのはまあ分かるが魅力が耐久力になるというのはどういうことだ。


 魅力:外見の美しさ、個性の強さ、超自然的なエネルギーの強さ。対人スキルや変装スキルなどにボーナスを与える。


(魅力ってそういう能力だったのか)

「魅力?」

(ああ、ステータスを見てたんだよ)

「ステータス? 運命数のこと?」

(運命数?)

「違うの?」

(???)

「私は冥天の運命数だよ。ヤギさんは獣王の生まれだよね?」

(冥天? 獣王?)

「そういえば階位が横狼に変わっていたけど、ヤギさんのおかげかな。ヤギさんは私の友達だものね」

 話が通じない……が、なんとなく分かった気がする。

 俺は自分のステータスから『大いなる彼方の記憶』に意識を集中する。


 大いなる彼方の記憶:大いなる彼方の世界の記憶。あなたの見える世界は他人とは違う。


 このアビリティが、他の人には占いの用語のように見えているモノをゲームのように分かりやすいステータスとして見せているらしい。

 これはでっかいアドバンテージなんじゃないだろうか。

(その冥天ってのはどういう意味なんだ?)

「芸道に向く才能の持ち主だよ」

 ふむふむやっぱりか。

「私、将来は歌手になれるかな?」

 夢を語る子供が眩しい! 俺にも昔はこういう時期があったっけな。もう思い出せない。ヤギだし。

「ふわああ」

 ナタリーが小さなあくびをした。

 そうか、もう夜も遅いしな。

(獣道すらない森の中だし追ってくる気配もない。今日はここで眠ろう)

「私、まだ頑張るよ?」

(無理は良くない。明日もまた大変だろうし、どうせ新月の夜じゃ暗くて身動きも取れない。今のうちに眠っておくのがいいよ)

「分かった! ヤギさん頭いいね!」

(いつのまにか知力上がってるみたいだしね)

 俺はナタリーの横に横たわる。

(寒いだろう? カシミアではないけどそれなりにふかふかだし、温かいつもりだよ)

「うん、ありがとうヤギさん」

 俺のお腹に抱きつくようにナタリーは眠った。


(おやすみ)

「おやすみなさい……」

 しかし一度目をつぶったナタリーがまた目を開けた。

(おやすみ)

「おやすみなさい」

 また目を開けた。

(……どうした?)

「あの、ヤギさんはどこにもいかないよね?」

(ナタリーがお腹の上に寝ているんだからどこにもいけないよ)

「良かった、おやすみなさい」

(ああ今後こそおやすみ)

 ぎゅっとナタリーは俺にしがみついて眠った。


 やっぱ事情のある生い立ちなんだろうな。

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