4話 ヤギ、狩られる
名前 ニシダ・キョウスケ
種族 ヤギ
タイプ 動物
レベル ヤング
筋力 普通
敏捷 優秀
耐久 普通
知力 皆無
精神 普通
魅力 微小
スキル 攻撃レベル1、知覚レベル1、知識(ダンジョン)レベル1(+2)、記憶レベル1
アビリティ 大いなる彼方の記憶、武器(角)、突撃、夜目、嗅覚、スキルフォーカス:知識(ダンジョン)
これが俺のステータス。
種族ヤギのタイプ動物。
俺はタイプ動物に意識を集中すると、説明が思い浮かんだ。
動物:人型生物でもモンスターでもない生きている生物。通常知力は最低値になり、スキル習得に制限がかかる。動物はクラスを持てない。レベルは年齢とともに増大する。
なんか不穏だ。こんどはクラスと経験値という単語に意識を集中させる。
クラス:経験値によって成長し、スキルポイントとアビリティをもたらす。
経験値:一定量溜まることでクラスレベルが増大する。
つまり、経験値によって成長するのはクラスのレベルで、レベルが上がればスキルとアビリティが増える。だけど動物はクラスを持てないから経験値ではレベルが上がらないということか。
なんだよそれ、せっかくステータスがあるのに成長させることができないとか終わってる。
唯一の望みは、なんか大層な名前のついた『大いなる彼方の記憶』か。
大いなる彼方の記憶:大いなる彼方の世界の記憶。あなたの見える世界は他人とは違う。
よくわからないが、レベルを持てるわけじゃないらしい。
(あーあ、やる気無くした、やっぱテキトーに生きよ)
俺はぐでーと草原に横になり目の前の草を舌で巻き取ってむしゃむしゃと食べながらふて寝した。
(草うめー)
もうどうでもいいやー、俺はヤギヤギヤギ……。
三日後。
森に人間がやってきた。
中世ヨーロッパのような服を着ていて、腰には分厚い内側に湾曲した剣というより鉈のような刀剣を持った男3人、森の住人という感じだ。
もしかしたら狩人かもしれない、新鮮なヤギ肉を狙っているのではないか?
よし逃げよう。
と真っ先に動いたのがいけなかったのか、人間達は俺を指差すと追いかけてきた。
(げえ!?)
捕まってたまるか! 人間の脚よりヤギの脚の方が速いんだ!
俺はぱっとかけ出した。
が、男の一人がピューと指笛を吹くと、
『ワン!』
げえ! 犬だ!
ふさふさの毛並みをした犬が横から猛烈な勢いで突っ込んできた。
勢いのついたまま俺に跳びかかり首に噛み付き引き倒された。
(痛い! 痛い! マジ痛い!)
引き離そうともがくが、それより早く人間達がやってきて俺に縄をかけた。
「よしよし、よくやったぞ」
飼い主らしき人間はワシャワシャと犬をなでて腰からジャーキーの破片を犬にあげている。
憎たらしい犬は嬉しそうに尻尾を振って肉を食べている。
(そんな不味そうな肉なんかより美味しいもの教えたげるから助けてくれよ)
『グルル』
(そこをなんとか)
『ワン!』
(そんな肉の切れっ端のために人間の言いなりになって、動物として恥ずかしくないのか!)
『ワンワン!』
(痛い! もう動けないんだから噛むなよ! やめろ! やめろよぅ!)
畜生、俺が何をしたってんだよ。
俺が捕まっている間に、他のヤギは逃げたようだ。
ここでも俺はスケープゴートなのか……。