3話 俺のステータスから分かった衝撃の真実
そうだ、ここは異世界。
異世界という単語を思い描いた瞬間、ふと脳裏にある言葉がよぎった。
『ステータスオープン』
異世界ファンタジーといえばステータスだ。なぜ思い出せなかったのだろう。
もちろん何も起こらない可能性もある。というか普通は何も起こらない。
だけど、なぜか確信めいた成功の予感が俺にはあった。
この世界にはステータスが存在する。ステータスオープンという単語を思い出した瞬間から間違いなくそうであると確信していた。
その日の夕方、俺は一人森の木陰に移動し、周りに誰もいないことを確認してから息を吸い込んだ。
そしてあの言葉を唱える。
『ステータスオープン』
この言葉が、俺の人生を一変させる結果になろうとは、この瞬間の俺には思いもしなかったのだった。
頭のなかに映像が現れる。
ゲームのようにウィンドウに表示されたその文字列は、間違いなく俺が見たかったものだ。
名前 ニシダ・キョウスケ
種族 ヤギ
タイプ 動物
レベル ヤング
筋力 普通
敏捷 優秀
耐久 普通
知力 皆無
精神 普通
魅力 微小
スキル 攻撃レベル1、知覚レベル1、知識(ダンジョン)レベル1(+2)、記憶レベル1
アビリティ 大いなる彼方の記憶、武器(角)、突撃、夜目、嗅覚 、スキルフォーカス:知識(ダンジョン)
アビリティというのは特殊能力のようだ。スキルは技能でレベル1がついているところを見ると成長させることができるようだ。スキルフォーカスというアビリティはスキルにボーナスを与えるようで、実質俺はレベル3相当の知識(ダンジョン)を持っている。これは竜のおじさんに教わった成果だと思われる。
能力は良く分からない。数字ではなく文章で表示されるとか、不親切だ。とにかく頭が悪いらしい。
まあそこは置いておこう、全然重要な事じゃない。
名前は昔のままだ。そういえばこの世界の母さんから名前をつけてもらっていない。
そう名前をつけてもらっていない、おかしい。
いや思い返せばおかしいことだらけじゃないか。
俺は水辺に走った。四本の脚で地面を蹴った。
「めぇ~?」
俺の慌てた様子を見て、昨日俺に声をかけてくれた女の子が不思議そうに首を傾げていた。
そして俺は水辺にたどり着き、水に映った自分の姿を再確認する。
転生の際に、俺は認識力を失っていたらしい。これが当たり前だと、自分の姿や周りの状況に疑問を抱かなかった。
だけど、ステータスに書かれていた文字を見てしまってから俺は真実を認識してしまったのだ。
白い体毛の生え、目は微妙にタレ目で間抜けた風にも見える細長い顔。頭には角が生えていて、顎からは髭が伸びている。
俺は驚いて叫んだ。
「めぇ~!!!(ヤギだこれええええ!!!)」
俺はヤギに転生していたらしい。