17話 やさしい魔法使いの倒し方
「魔法はねー、頭のなかにある、ちかちかするものに触れるの」
(ふむふむ)
俺は急遽、ナタリーから魔法について改めて教えてもらうことにした。あんな魔法を使われたらナタリーを守ることはできない。
ただナタリーは魔法についてどこかで教育を受けたわけでなく、生まれつきなんとなく使えるとのことだ。
「なんかこう、うぅぅぅって集中して、もやもやーって溜まってくるから、それをぐにーって形にして、どかーんってやるの」
(わからん)
「ええっとね、こうぎゅーってするの、でがーって」
もしかしてこの娘、天才なんだろうか。それとも魔法が使える人ならこの擬音だらけの説明が分かったりするんだろうか。
魔法について、身振り手振り小さな身体を目一杯使って説明してくれるナタリーを温かく見守りながら、魔法の対策を考える。
魔法はヤバイ。実体のあるものを飛ばすわけじゃなく、任意の地点に直接作用するとか回避しようがない。
ん、そういえば……俺は自分のアビリティを思い出した。
アビリティ 大いなる彼方の記憶、武器強化(角)、突撃強化、暗視、嗅覚、スキルフォーカス:知識(ダンジョン)、主人との絆、呪文共有、アンデッドの耐性、血脈の発露、危険回避、突き飛ばし(初級)、能力上昇、血脈の覚醒、絶ちえぬ絆
危険回避:範囲攻撃を回避して無効化する。
範囲攻撃ってもしかして魔法のことか。これなら回避できるのではないだろうか。
過信はできないが、範囲魔法にナタリーと俺が同時に巻き込まれない位置で、俺に魔法が向けられるよう、つまり俺が脅威であると相手に思わせればいいわけだ。それで俺が相手の魔法を無効化すれば被害を抑えることができる。
が、これは相手に戦略ミスに依存する方法だ。俺ならこんな恐ろしい魔法を使える魔法使いを何を置いても先に倒そうと考える。
(むむむ)
もう一度ナタリーの説明に耳を傾ける。
「むむむってなって、もやもやを、どかーんってするの!」
(そのむむむっが無ければ魔法は使えないの?)
「うーん、多分」
(ちょっとやってみようか。安全な魔法を使ってみて)
「安全な魔法? じゃあエンタングルを使うね」
(草木を操る魔法か。それなら安全かな?)
「いくよ……」
ナタリーが集中する。あたりの空気が変わるのが分かった。そして呪文がナタリーの口から紡がれ今まさに呪文が発動しようとする瞬間。
コチョコチョ。
「ひゃん!!」
俺は鼻先でナタリーの脇腹をくすぐった。思わずナタリーは身をよじって笑った。
パチンと空気が弾けるような小さな音がして、ナタリーの周囲を覆っていた張り詰めた何かが消える。そして……何も起こらなかった。
(やはり集中力を切らせたら魔法の発動に失敗するのか)
狙うならここだ。魔法を発動する瞬間、攻撃を加えれば魔法の発動は失敗する。あとは……。
(見えないところ、たとえば木の裏には魔法を使えるのか?)
「ううん、それは無理」
良かった。それができるならそれこと体内を起点に爆発させればどんな怪物でも即死させられる鬼畜設定になるところだった。
(相手の視界から離れれば魔法は使えない)
つまり、相手が見えないところから一気に近づいて、魔法を使う瞬間を確実に妨害できるようにする。これが魔法対策だ。
(口で言うのは簡単だけどな)
相手が強かったから勝てなかったでは済まない。生存競争に次頑張ろうはないんだ。
俺は野生のヤギだもん、そこらへんはシビアなのだ。




