1話 オープニング
「もう一度チャンスがあればきっと上手くやれる」
救急車の中で暗くなりつつある視界の中、縋り付くように頭上のライトに意識を向け、俺はそう言おうとしたが口からは掠れたうめき声しかでなかった。
あまり目立ちたくない性格で、言い合いになるくらいならこっちから折れてしまった方が楽。言われたことをハイハイとやっているうちに、俺のところに仕事が集まるようになった。
別段俺は優秀な方じゃないから、すぐにオーバーワークになり残業が増え、疲れからかミスが増え、いつもフラフラな状態だった。
今日も本来は俺の担当じゃ無かった案件を振られて、徹夜して資料作って取引先に持っていった。なんとか説明を追え、次の仕事の段取りのためにコンビニ弁当を車の中で食べ、頭痛薬を栄養ドリンクで流し込む。
その帰り、疲れから居眠り運転してしまい交通事故。こうして今、俺は人生を終えようとしているというわけだ。
笑えない。笑えないのだけど笑うしかない。
「次があるならもう絶対誰かのスケープゴート(生け贄の山羊)にはなってやらない」
面倒事を押し付けられるのはもう嫌だ。
次は相手を突き飛ばしてでも、自分のやりたいことをやって生きるんだ。
ついに視界が黒く染まり、俺の意識は消えていった。