佐々木誠一郎
「姫華さんは高いところは大丈夫なの?」
「はい。高いところはわりと好きです」
緊張して、素っ気ない返事しかできない。そんな自分が嫌になる。もっと気のきいた応答は、できないものか。
「いつも通りでいいんだよ」
一瞬、何を言われたか理解できなかった。
「気のきいた返答とか考えてたんじゃないの?」
図星だった。当たりすぎていて何も言えない。
「僕はありのままの君を好きになった。だから、普通でいい」
そう言われて、緊張が少し治まった気がする。それからは自分らしくあれたと思う。そして、自分たちの乗る観覧車がてっぺんにさしかかった。その時に佐々木さんが口を開く。
「姫華さん、抱きしめてもいい?」
「へ!?」
いきなりの言葉にどうしていいか分からなくなる。しかも、それが抱きしめるという単語。頭の中でその単語がぐるぐると循環している。私が返答に困っていると
「嫌なら、断ってもかまわない」
そう言われて、少し考える。嫌とは少しも思わない。返事するのがただ、恥ずかしい。でも、ちゃんと皆と向き合わないといけない。もしかしたら、これで答えが出るかもしれない。答えでなくても、手がかりくらいにはなると思う。これは元々、そういうのが、私自身の目的だと思う。皆がアピールして、それを私が受け止める。そう考えると、迷わずに答えることができた。
「かまわないです」
そう返事するのは恥ずかしかったけど、その直後に抱きしめられた。顔が見られないから、これはこれでよかったかもしれない。
「やっぱり、君が好きだ。こうしていると、何よりも落ち着く」
一気に体温が上がる。多分、耳まで真っ赤だと思う。こんなんで答えなんて出るのだろうか。でも、こうしていると、私も落ち着く。家族以外の人といて、落ち着いたり心地よく感じるのは、あとにも先にも皆だけだと思う。
「姫華さんの中で答えは出た?」
抱きしめたまま、そう聞かれる。
「いえ、まだ。でも、前よりは皆のことを見れていると思います」
「そっか。ゆっくりでいい、ちゃんと待つから」
佐々木さんはすごく優しい。皆の中でも特に。そこが彼のいいところだと思う。
「もうすぐだね」
そう言って、私から離れる。外を見ると、あと二、三分で着きそうだった。最後の方は、世間話をした。最初からは想像もできないくらい、穏やかな気持ちになった。不思議な人だと、そう思った。
そして、長いようで短かった、観覧車一周目は終わった。外では雪川さんが待っていた。佐々木さんと入れ違いで、観覧車に乗り込んできた。
「よろしくお願いします」
「あ、こちらこそ」
て、何言ってるんだろう。なんか、雪川さんとって緊張する。さっきとは、少し違う緊張。そして、観覧車二周目に突入した。




