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遊園地3

建物の中は、予想通りというかなんというか。ひんやりして、静まり返っている。まあ、おばけ屋敷だからそうじゃないといけないけど。いや、それよりもこれはちょっと……

「あの、何でこんなにゆっくりなんですか?」

「たっぷり堪能するためだよ」

シンさんはそう言って、ニヤリとする。絶対、私のことを見て楽しんでいる。だって、顔がどう見たってそう言っている。

「姫ちゃんは、おばけダメなの?」

と、玲音さんがそっと耳打ちしてきた。私は、うん、とうなずく。隠していても、どうせバレるし、何よりもうバレている気がする。隠す意味がない。

「どうしてそんなことを?」

「ああ、それは」

「きゃーっ!」

め、目の前に何かがいた。ていうか、何か顔にあたった。もう嫌だ。早く出たいよぉ。

「姫ちゃん、大丈夫? 本当に、ダメなのね」

玲音さんに言われて、我に返った。

「えっと……すみません!」

あわてて玲音さんから離れる。無意識のうちに、彼の胸に飛び込んでいた。無意識だったとは言え、今思うと恥ずかしい……

「えっと、私はあのままでも全然構わないけど……」

と、言葉を濁す。最後の方は何を言ったか分からなかった。私は玲音さんに聞く。

「え、気にしないで。ね」

暗くてあまりよくは分からなかったけど、顔が赤かったような……

「顔、赤くないですか? 大丈夫ですか?」

「そういうこと言わないの!」

と、今度ははっきりと見えた。真っ赤な顔が。あ……なんか、ドキドキする。私の顔はどんどん熱くなっていく。なぜ。玲音さんの顔が見れない。見られたくない。お互いに気まずい雰囲気になる。

「何? 二人ともどうかした?」

「シン、何でもないわよ。姫ちゃんがあまりに怖がりでね」

と、シンさんに弁解している。ポーカーフェイス、すごい。私は、多分一瞬ももたない。すぐにバレると思う。いや、間違いなくバレる。

「ふぅ」

玲音さんがほっとしてる? なんか、可愛い。玲音さんも焦ったり動揺したりする事あるんだ。そう思うと、親近感がわいてくる。大人だな、と思っていたけど、私と似ているところもあるんだ。

「姫ちゃん、何ニコニコしているの?」

「玲音さんて可愛いですね」

そう言って、私はおばけ屋敷の中を歩いていく。不思議とさっきまでの恐怖はなかった。むしろ楽しい。多分、おばけ屋敷が楽しいんじゃなくて、玲音さんが楽しいんだと思う。いつもからかわれていたのに、出し抜いた気分。

そして、それからはおばけに驚くこともなく、建物を出た。

「何で、最後は怖がらないの? つまんない」

シンさんが、ぶつぶつと文句を言っている。その姿も何だか楽しくて。仕返しするチャンスかも、そう考えたけど、そんな気にはなれなかった。

「次、行きませんか?」

「そうだね、次は何する?」

「今度は姫華さんが選んでください」

色々と迷った結果、私は一番最初に目に入った乗り物を指差す。

「あれがいいです。もちろん皆でですよ」

「あれか」

「仕返しかな……」

さっきは仕返しする気にはならなかったけど、あの乗り物を見たらそんな気になった。さっきのおばけ屋敷のこともあるから、皆は承諾してくれた。


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