参考
気持ちを確かめあってから、はや一週間。今日は皆と出掛けることになった。久しぶりですごく楽しみにしている。気持ちが高揚して、朝早く目覚めてしまった。そりゃあもう、遠足前の小学生のように。
「姫華、起きてるか?」
ドアの向こうから声が聞こえて、急いでドアに向かう。ドアを開けると一之瀬さんが立っていた。
「おはようございます。どうしましたか?」
「いや、少し頼みがあって」
一之瀬さんから渡に頼み事、なんだろう。一之瀬さんの説明を聞く。
「今度、新しい小説を書き始めるんだが。その内容が異世界物にしようと思っている。姫華は異世界から来たみたいだし、話をしたくて」
「異世界ですか? いいですね。私、そういうの大好きです。構いませんよ、入ってください」
私は一之瀬さんを部屋に招き入れ、話をした。
「異世界に来て一番最初に思ったことは何だ?」
ここに来てから思ったこと、驚いたけどなんか違う気がする。驚いたことには驚いたけど、一番最初に思ったことは……
「えっと、驚きすぎて何も考えられなかったです。思考回路がショートした感じで」
これがここだけの話ってやつかな。これ以上に表現はできないと思う。
「今まででホームシックしたことは?」
「ないですね。皆のお陰で毎日が楽しくて、それこそ自分のもといた世界を忘れてしまうほど……」
なんか、恥ずかしい。思ってることを実際に口に出してみると、恥ずかしいかもしれない。あれ、でも、一之瀬さんが少し嬉しそう。まあ、皆のお陰で、て言うのは本当だから。
「じゃあ、異世界と自分のもといた世界の違いは?」
「ほとんど同じです。いや、本当に驚くくらい。逆に間違い探しみたいで。でも、生活は全然違います」
うん、こんなセレブ生活したことないし、テレビ以外で直接見るのは初めてだ。マフィアの存在だって、謎過ぎて、いるかどうかすら謎だったもん。あ、速水さん、元気かな。優しい人だったな。マフィアじゃないみたい。今度、会いに行こうかな。
「生活の違い?」
「はい。財閥とかマフィアとか私には全く縁のないことでしたから」
「なるほど。ありがとう、参考になった」
「役に立てたみたいで嬉しいです。あ、もうすぐ朝食ですね。一緒に行きませんか?」
時計を見ると、いつの間にかそんな時間になっていた。今日は準備を手伝わなくていいと言われたけど、本当によかったのか、少し不安になった。
「そうだな、一緒に行くか。そろそろ皆、集まる頃だからな」
私たちは朝食へ向かった。
「そういえば、今日はどこに行くんですか? 私、場所をまだ聞いていなくて」
「その時までの秘密だ。楽しみにしていろ」
一之瀬さんにそう言われると、楽しみになって余計に気になってきた。でも、彼は口が固そうなので、聞き出すのをあきらめて、素直に待つことにする。本当にどこに行くんだろう。遊園地とかいいなぁ、最近行っていないから。絶叫マシーンに乗りたい、恋しい。そんなことを考えているうちに部屋についた。
「おはようございます」
「おはよう、姫華さん」
皆に挨拶をして席につき、朝食を済ませる。何だか急いでるみたいなので、急いで部屋に戻って、着替えを済ませる。城之崎さんいわく、動きやすい方がいいとのこと。彼の言う通り、そういう服装に着替えて、皆が待っている場所に向かった。
「いい服装ですね。これなら、十分に動き回れるでしょう」
「うん、じゃあ、行こうか」
そうして私たちは車に乗り込んで、目的地が分からない私をよそに、出発した。




