その後
なんだろう、月野さんの一件があってから皆が少し変わった気がする。雰囲気が柔らかくなったような気がする。まあ、財閥の件が解決したからだと思うけど。これで解決したってことは、皆はもうひとつの方の仕事をしなくてよくなった、てことだよね。
「危険は無くなったの、かな……」
「危険?」
いきなり、すぐ後ろから声がしたので、慌てて振り向く。
「玲音さん。いえ、終わったんだなぁ、と」
「解放感を味わっていたってわけね」
「はい」
ゆっくりと落ち着いて話すのは、ずいぶん久しい気がする。まあ、慌ただしかったからだけど。こういう何でもないのって、現実的でいいな。でも、これって現実なのかな。乙女ゲームの世界で私にとっての現実ってわけでもなさそう。
「どうしたの?」
玲音さんに声をかけられてはっとする。
「いえ、何でもないです」
そう答えると、玲音さんは私に顔を近づけてきた。
「!?」
いきなりで、しかも、かなり近い。この近さは、耐えられない……私は急いで玲音さんから離れる。
「どうしたの? 顔、赤いよ」
言いながらニヤニヤしている。絶対狙ってた。それよりも、私ってバカだ。これで、からかいに引っかかるのは何度目だろうか。でも、分かってても反応する、してしまう。そんなことを考えていると玲音さんがクスクス笑い始めた。
「姫ちゃん、可愛い。それよりも」
「?」
さっきからは想像できないくらい、真剣な表情になった。
「玲音さん?」
「姫ちゃん、ちょっとこっち来て」
玲音さんはそう言うなり、私の手を引っ張った。あまりに真剣な表情で、それ以上聞けなかった。とりあえず、彼についていった。
どこに行くのか、検討もつかず、一分くらい家を歩いた。そして、そとに出てまた歩く。
「……」
玲音さんは何もしゃべらない。何かしたのかな。
「玲音さん」
彼の名前を呼ぶと同時に急停止した。そのせいで、私は玲音さんの背中に、思い切り顔をぶつけた。
「ごめんね、いきなりこんなところに」
「……ここって裏庭?」
見覚えのある場所。つい最近、探索したからよく覚えていた。事を大きくした場所、懐かしいかも。
「姫ちゃんに言いたいことがあって」
「?」
玲音さんはなかなか言い出さない。なんだか迷っている様子だった。
「ふぅ。はっきり言うよ」
玲音さんは軽く深呼吸して、私をまっすぐに見て言った。それはもう、聞き間違いかと思った言葉だった。私には縁の無いもの。頭が真っ白になった。




