理由1
私たちは佐々木さんの提案で、月野さんの元へ来ている。月野さんは私たちを見るなり、顔をしかめた。
「今さら話はありません」
私たちが口を開く前に、そう言い放った。この様子だと、何をしに来たか知っているみたいだ。
「私たちはあなたに話があります」
「……」
月野さんは黙りこむ。雪川さんはお構いなしに話を続ける。
「単刀直入に言うと、私たち財閥を消した理由が知りたいです」
「顔、おっかないですよ」
「誤魔化さないでください!」
初めて、雪川さんの怒鳴り声を聞いた。いつも穏和な彼がこんなにも言うところを見ると、相当頭にきているんだと思う。
「はぁ、話せばいいんだろ」
「!」
多分、私以外にも驚いた人はいただろう。月野さんの口調がいつもよりも荒い。でも、皆は気にする様子もなく、話が進んだ。
「ただの恨みだよ。知ってるだろう、俺と俺の妹のこと」
「二人揃って養子ってことか?」
「養子!?」
あわてて自分の口を押さえる。月野さんから妹がいるって ことは聞いていたけど、養子だったなんて初耳だ。だから、自分の反応は当たり前だと思ったけど、なんだか申し訳ない。
「そうだ、俺と楓は養子として月野家に引き取られた。本当の両親は早くに病死したから」
月野さんは唇を噛み締めていた。おそらく話したくないんだろう。あのときと、楓さんのことを話すときと一緒で辛いから。私には月野さんの苦しみは分からない。分かってあげられないのが私も辛い。
「これから話すことがこうなることになったきっかけだ。姫華さんは聞かない方がいい。あんたには辛い思いをさせたくない」
「嫌です」
迷わず、きっぱりと言いきる。聞きたくない、そう思う。けど、自分だけ辛い思いから逃げるなんて絶対にしたくない。あとは、一番に思ったことを言った。
「私と月野さんは友達です。友達に隠し事は、なしです」
私にとって初めてとも言える友達だった。だから、友達がどんなものだとか、断定できる訳じゃない。でも、せめて友達の苦しみは一緒に抱えたい。少しでも、相手が楽になれるように。
「後悔してもしらないよ」
「絶対にしません!」
私にはもう、迷いが一つもなかった。そして、月野さんは気を取り直して話始めた。




