安心
「すみません、もう一人中にいませんでしたか?」
「もう一人? ああ、いたよ。怪我人が一人」
「足を怪我していて動けないから、中で待ってもらっている」
怪我! でも、生きている。よかった。速水さんが月野さんたちに殺されていないことが、ただ、嬉しかった。でも、怪我をしている。いてもたってもいられなくて、建物のなかに入る。
「速水さん! どこですか!」
「ここだ」
弱々しい声をしっかりと聞き取り、声のした方へ向かう。すると、足を手で押さえている速水さんがいた。急いで彼の元に駆け寄る。
「大丈夫ですか!? すごい血が……」
「大丈夫だ。にしても何でここにいる」
「中に怪我人が一人いるって聞いて、それで……」
怒られる、そう思った。逃げろって言われたのに、またここに戻ってきてしまったから。それでも、あのままだったら、気が気じゃなかったと思う。速水さんの大丈夫そうな顔が見れたから、少しだけど安心した。後悔はない。
「はぁ、ごめんな。すごく心配かけたな。顔が真っ青だ。こんなんじゃ、気が気じゃなかっただろうな。お前の気持ちも分かるから怒ったりしねぇよ」
速水さんはそう言った。全部見抜かれている。
「あ、止血しないと!」
あわてて止血しようとする。すると、速水さんにそれを制された。
「大丈夫だ。止血は施した。まあ、これだけ血が出てたら分からない、か」
言いながら、怪我した足をさすっている。それと同時に顔をしかめた。やっぱり相当痛むんだ。見ているだけで、私まで痛くなる。
「救急車のサイレンだ」
「本当だ。速水さん、怪我が治ったら私にお礼をさせてください」
どうしても、お礼がしたい。私はもちろんだけど、皆のことも助けた人だ。私を逃がしていなかったら、皆が怪我をしていたかもしれない。
「その前に刑務所だな」
彼はポツリと呟いた。
「俺が、犯罪者であることには代わりない。お前からのお礼を受けるのは罪を償ってからになるが、それでもいいのか?」
私は、しっかりとうなずく。たとえ何年かかってでもお礼をしないといけない。
「待ちます。速水さんが罪を償い終わるその日まで」
「ありがとう」
「怪我人はあなたですか?」
救急隊員がやっと来た。速水さんは、担架に乗せられて行ってしまった。私もその後をついていった。そして、速水さんが救急車に乗せられて行った後、家に帰り、皆に事情を説明した。
「じゃあ、姫華さんの恩人なんだね」
「はい。あと、こんなことになってしまってすみませんでした!」
「構わないよ。こうなったのは僕たちのせいだから。それよりも、明日は皆で月野さんのところへ行こう」
佐々木さんの言葉に私も含めて皆が驚く。言葉の真意が分からない。
「彼と話をしよう。あっさりと事件は解決したけど、月野さんとのことはあっさりと解決したらいけない」
「それもそうだな。しっかりと決着つけねぇと」
佐々木さんの提案で私たちは月野さんの元へ行くことになった。ちゃんと解決しますように、私はそう祈ることしかできなかった。そして、翌日になった。




