警察の到着
とうとう、着いてしまった。首謀者が月野さんであることを知ったらどんな顔をするか。月野さんの元へ近づくにつれて苦しくなる。特に辛いのは雪川さんだ。幼なじみでずっと一緒だったから。
「姫華さん、大丈夫ですよ」
「雪川さん?」
「心配しなくても大丈夫ですよ」
大丈夫、という言葉が私へのものか、雪川さん自身のものなのかは分からないけど、彼がそう言うなら、大丈夫だと思った。苦しさが消えたわけじゃないけど、さっきよりはよくなった。
「警察はまだ来ていないね」
「嘘だったんじゃないのか?」
「本当だと思います」
つい反論してしまった。でも、あの人が速水さんが嘘を吐くとは思えない。城之崎さんは私の反論に驚いていた。
「サイレンの音がする」
「本当だ」
シンさんの言葉に皆が耳をすませる。私も耳をすませる。すると、シンさんの言う通りパトカーのサイレンが聞こえた。そして、数十秒後に二台のパトカーが到着した。
「危ないですからここから離れてください」
「人質にされていた家族を、助けに来ていただけですよ」
すると、私たちは警察官にまじまじと見られた。
「人質にされていた家族とは?」
「この子です」
と、佐々木さんは私を表した。私は、警察官にじっと見られた。
「マフィア相手によく無事でしたね。人質がいないなら大分楽です。後で話を聞かせてください」
そして、ここから動かないでください、と言って警察官の人たちは、建物のなかに入り込んだ。
「なんか、心配です」
「ああいうのはベテランに任せろ」
確かに、私たちよりもベテランだけど、心配には代わりない。でも、私になにかできる訳でもないので、待つことしかできなかった。
彼らが建物のなかに入ってから三十分が過ぎた。なかなか戻ってこないことに不安が募る。中の状況が分からないから、さらに心配だ。
「大丈夫だよ」
すると、中から警察官と月野さんたちが出てきた。月野さんたちの手には手錠がかかっていた。でも、一人足りない。
「速水さんがいない」
そう、そこには危険を省みず私を人質から解放してくれた、速水さんがいなかった。その事に考えが悪い方へいく。もしかしたら、月野さんたちに……私の顔から血の気が引いた。




