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片想い

感動的なものだった。これに曲がつくと、私はもう、涙腺が崩壊するだろう。いや私だけじゃなく聞く人は涙するだろう。それくらい、いいものになっていた。

「いいです。私、感動しました。恋とか、したこと、ないんですけど、この人の気持ちが、すごく、伝わって……」

嗚咽混じりでうまく話せない。ちゃんと伝わっただろうか、私のこの気持ち。恋したことないのに、伝わる、こんな不思議なことが起こっている。

「ありがとう。そこまで言ってもらえると、書いた甲斐があった」

涙でよく見えないけど、多分、一之瀬さんは笑顔だと思う。始めて歌詞を読んで泣いた。もう一生、こんな気持ちになる歌詞には出会わないと思うくらいに、感動した。心に響いた。

私は、十分くらいしてやっと落ち着いた。こんな気持ちになるなんて、とあとから恥ずかしくなる。歌詞みて、あんなに泣くなんて、しかも一之瀬さんに見られたなんて。恥ずかしい。

「そういえば、さっき歌詞を読み終わって気になったことがあったんですけど」

「何か、おかしなところがあったのか? 遠慮なく言ってくれ」

一之瀬さんは真剣な眼差しで私を見る。

「えっと、おかしな所じゃなくて……」

言いづらい。思わず口ごもってしまう。こういうことは聞いてもいいものなのだろうか。でも、自分で言い出したことだし、言うだけ言ってみることにする。

「一之瀬さんは片想いしたことあるんですか?」

「!?」

一之瀬さんは口をぽっかりと開けていた。そりゃあそうだ、誰だって驚く。こんなことを急に言われたら。聞かない方がよかったかも、と思ったら一之瀬さんが口を開いた。

「今、だな」

「へえ、今片想いを……えぇ!?」

一之瀬さんに想い人が……まさか、いるなんて。驚いて今度は私の方が口をぽっかりと開ける。これは驚いた。

「それがどんな人かは聞かない方がいいですか?」

「ああ、そうしてくれるとありがたい」

ですよね。でも、気になるのが人間の心理で。それは私も例外ではない。気になる、聞かない方がよかったような気がする。

「時がきたら、教える。今は言えない」

「わかりました」

いつになるかは分からないけど教えてくれるらしい。その日を楽しみに待つことにした。

「これは俺とお前の秘密だ。それよりも、どうしてそんなことを聞いたのだ?」

「えっと、歌詞を見て片想いしているのかも、と」

「そうか。表れるものなのだな」

一瞬、本当に一瞬だったけど、一之瀬さんが笑ったような……すごく優しい笑みだった気がした。

「今日は本当に助かった。お前のおかげでいい歌詞が書けた」

「私、何もしてませんよ」

「いや、姫華がいなければ書けなかった」

そんなことを言ってもらえると嬉しい。手伝った甲斐があった。でも、実際は片想いの相手のおかげじゃ、という考えがあったけど、無理やり抑え込む。

「ありがとうございます。図々しいですけど、また何かあったらお手伝いさせてください」

「ああ、是非頼む」

そして、私は一之瀬さんの部屋を後にする。自分の部屋に戻って、さっきの歌詞について考えた。頭から当分は離れないな、と思いながら歌を口ずさんだ。

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