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作詞

「この最初のところは一目惚れしたところだと思います」

「一目惚れ、か……」

そう言って、一之瀬さんは目をつぶった。多分、考えているのだろう。小説を書くように、いい文章を考えているのだと思う。

「それなら単純に、一目見て恋に落ちた、はどうだろうか?」

「シンプルにですか。いいですね。難しく表現するよりはその方がリスナーにも、情景がイメージしやすいと思います」

そんな感じで、今のところは順調に作詞が進んでいく。私がいなくてもいいんじゃないか、と思うくらいスムーズにいってる。さすがは一之瀬さん、表現がうまい。すぐに想像できる。

「じゃあ、サビですね。ここは、想いが届かないことを表していると思います」

「手を伸ばせば届きそうな月のような君は、私を導いてくれる。それでもやっぱり手は届かない。触れることもできない。どうすればかぐや姫になれるだろう。月からのお迎えが来るといいのに」

一之瀬さんは口ずさみながら、スラスラと歌詞を書いていく。サビのあと、もう一度最初から繰り返される。そして、間奏が入り、サビに戻る。

「ここは、少し変えた方が……これがいいな。こっちは……」

もはや私の存在は空気と化していた。多分、熱中すると周りが見えなくなるタイプなのだろう。一之瀬さんらしくていいと思った。私は彼の邪魔をしないようにじっと、作詞する一之瀬さんを見ていた。小説を書くときもこんな風なのかな。

そして、時計をふと見ると作詞を始めて二時間が経っていた。そんなに長い時間やっている気はしなくて驚いた。すると、

「できた」

「できたんですか? 見てもいいですか?」

「もちろん、かまわない」

そう言って、彼は作詞したものを見せてくれた。私は一生懸命、目を通す。そして、読み終わった後は、涙を流していた。

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