探検
しばらくは何も起こらない、ごく平凡な生活が続いた。何も起こらないのは嬉しいけど、平凡すぎて逆に飽きてしまう。出かけるのもままならない。まあ、この家は広いから探検すれば、なかなかに面白いと思うけど。
「探検、か……してみようかな」
私はちょっとした思いつきで、家の探検をすることにした。子供っぽい提案だけど、面白そうだからそんなのは気にしない。
まずは庭は庭でも、裏庭に行ってみる。存在は知っていたけど、実際に行ったことはなかった。裏庭はちょっとした公園みたいだ。噴水があって、ベンチがある。この家、どれだけお金持ちなのだろうか。そこが知れない。すると、少し先の方で一之瀬さんの姿を見つける。声をかけてみようかな。
「一之瀬さん!」
彼はすぐにこちらに気づいてくれた。私が手を振ると、彼も振り返してくれた。私はすぐに彼に駆け寄る。
「何しているんですか?」
「俺は仕事の気分転換だ。お前は?」
「私は家の探検を……」
そう答えると、彼は微笑んだ。
「探検、か。お前らしい気がするな」
私らしい? 一之瀬さんの言っていることはよくわからないけど、私ってそんな風に映っているのだろうか、と考える。
「その好奇心は、お前らしい。まあ、迷子にならない程度に、な」
最後の一言は特に強調して言われた気がする。そんなに危なっかしいのかな。確かに、大丈夫、とは言い切れないけど、迷子になってもなんとかなる、と思う。裏庭を見終わって次の場所へ向かった。と言っても、この辺に何があるかは分からないから、行き当たりばったりで何とかする。
しばらく歩くと、柵が見えてきた。
「柵ってことは、敷地の端っこだよね」
行き当たりばったりは失敗だった。引き返そうとしたとき、柵の向こうに人影が見えた。思わず身を隠し、数人の人の話に耳をかたむける。
「調べはどうだ」
「順調です。データは取り返されましたが、次は抜かりありません」
「そうか。ではこの調子で頼む。くれぐれも気づかれぬように、な」
「はい」
何、今の会話。なんか、物騒な話が聞こえたような。データが取り返された? 気づかれぬように? まさか、彼ら、だろうか。そういえば、一人の人の声は聞き覚えがあった。いや、もう一人の姿も見たことある。
「彼らだ。急いで知らせなきゃ」
私は皆のもとへ一目散に駆けていった。




