胸騒ぎの正体
「これは……コンピューターウイルス」
なぜ、佐々木さんのパソコンが。多分、皆がそう思ったと思う。そんな彼のパソコンに、一通のメールが届く。
「これは! 皆、これを見てくれ」
佐々木さんに言われて、皆がパソコン画面に注目する。そこには私たちへの脅迫文が書かれていた。そして、最後には"Fromマフィア"と書かれている。一瞬で状況を理解する。
「このウイルスは彼らによるものだな」
「そうですね。まずいですね、このパソコンにはたくさんのデータが入っています。ハッキングされれば大変なことになります」
胸騒ぎの正体はこれだった。とんでもないことになっている。まさか、こうなるなんて誰にも予測はできなかっただろう。
「とりあえず、何とかやってみる取り戻せるだけ取り戻す」
佐々木さんはそう言って、パソコンに向かう。そして、キーボードをカタカタとたたき、文字を打ち始めた。ハッキングを跳ね返そうとしている。
「まずは一つ……よし、取り返した」
順調にことは進み、あっという間に三分の一のデータを取り戻す。
それから、佐々木さんは一生懸命になっていた。半分を取り返したところで、再び画面が文字だらけになった。
「誠一郎、また文字だらけだぜ」
「やられた。また持っていかれた。多分、時間が設定されているのかもしれない」
「時間……あなたが打っていたのはかれこれ二十分くらいです」
雪川さんは時計を見ていたようだった。彼の言葉から、タイムリミットは二十分。その時間でやっと半分取り返したのに、ぱぁだ。すると、今度は早くする、と言って佐々木さんは再びパソコンに向かう。
「残り時間を言ってくれる?」
「わかりました」
雪川さんは佐々木さんの指示で時間係になり、時計とにらめっこしていた。何だろう、何かむずむずしてきた。手が、うずいているような。
「あと一分です」
部屋に雪川さんの声が響く。佐々木さんはペースを上げ、急ぐ。しかし、
「だめだ、また持っていかれた。半分とちょっとしか取り戻せない」
まただめだった。佐々木さんはもちろん、皆、あきらめの表情を浮かべる。
「皆さん……」
そこで私に一つの考えが浮かんだ。むずむずする正体、それは私がハッキングに対抗することだった。でも、言ってもだめだと言われるかもしれない。無理だと言われるかもしれない。色々な考えが浮かび、言うのをためらってしまう。
「私の力ではもう、どうにもならない。あれが限界だよ」
「あなたにパソコンで敵う人は他にはいませんから、お手上げですね」
皆の表情がみるみるうちに曇っていく。あきらめの言葉を皆、呟いていっている。これはもう、迷っている場合じゃない。可能性が少しでもあるのなら、私は意を決して皆に申し出る。
「あの! それ、私にやらせてくれませんか?」
「君に?」
「姫華、お前、できるのか?」
予想通りに反応が返ってくる。でも、くじけずがんばる。
「できる、と言い切れませんが、やれるだけやります。可能性が少しでもあるのなら、やらせてください!」
私は深く頭を下げてお願いする。すると、
「やらせましょう。彼女の言う通りです」
雪川さんの言葉で皆は納得してくれた。私は急いで佐々木さんのパソコンに向かう。そして、一つ深呼吸して打ち始めた。




