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悲しき過去

遠い目をして月野さんは話始める。

「私には歳の離れた妹がいました。楓という名前でした。彼女とは歳が離れていたこともあり、すごく仲が良かったんです」

話すことがすべて過去形だ。話し方で何となく先が分かった。多分、その楓さんはもう……

「楓はもうこの世にいません」

あ、と気づく。月野さんはすごく辛そうで今にも泣きそうだ。それだけ楓さんのことが大切で大好きだったんだろう。そんな彼を見ると胸が苦しくなる。

「もう、いいです。そんなに辛そうな顔をしないで下さい。ごめんなさい、辛いことを思い出させて」

これ以上は、お互いが辛くなるだけだと思い、話を切ろうとする。でも、彼は止めなかった。

「もう、乗り越えないといけないんです。私以外の家族はマフィアに殺されました。財閥を消す。つまり、殺しているんです」

「そんな……」

権力で潰していくと言う意味の消すかと思っていた私はあっけにとられる。すると、月野さんはあわててつけ足す。

「権力で潰せなかったら、という意味です。初めから殺しているわけではありません」

「そうだったんですか。てことは月野さんの家族は潰れなかったんですね」

重々しくうなずいて続きを話す。

「マフィアが殺すのは夫妻だけです。だから、楓が死ぬことはなかったんです。でも、助けると言って結局……」

結局、巻き込まれて亡くなってしまったそうだ。彼の話から楓さんが優しく、勇気ある人ということが分かる。

「あのとき止めていれば……」

月野さんは自身の唇を噛む。すごく後悔しているような表情。私は家族を亡くしたことがないから、彼の気持ちを分かってあげられなかった。そう考えると、私がどれだけ恵まれているのかを考えさせられる。

「すみません……」

月野さんは怒りを抑えようとしている。それが自身に対するものか、マフィアに対するものかは分からない。あるいは両方かもしれない。月野さんは落ち着いてから再び話始める。

「その楓が、あなたにすごくよく似ているんです。顔はそうですが、性格とかも」

「じゃあ、それが理由なんですね」

「はい。すみません、自分で友達だと言っておきながら、こんな……」

月野さんの表情は時が進むにつれて、暗くなっている。私は元気づけようとするけど、何をすればいいのか分からない。

「それでは、私は帰ります。また、何か情報を得たら連絡します」

そう言って彼は去っていく。彼の背中はすごく悲しそうで、目をそらさずにはいられなかった。すると、携帯の着信音が聞こえた。

「はい、月野です」

月野さんの電話だ。さすが、大人だと感心する。さっきの暗さが嘘のように明るい声で話しているのが聞こえた。

「じゃあ、例のプランの実行をするように」

最初と最後の一言だけ聞こえた。プランの実行という言葉からすると仕事の話だろう。大変なんだと、改めて思った。

「……? 何だろう、胸がざわついたような」

急に胸騒ぎがしてくる。不安になり、私は急いで部屋に戻る。

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