萌え
「お前はホームシックとかしていないか?」
「え……」
彼の言葉に驚き、言葉がうまくでなかった。まさか、城之崎さんにそんなことを聞かれるなんて思ってもみなかった。
「最近、考え事しているように見えたから、その」
「心配、してくれているんですか?」
問いかけると、彼はそっぽを向いてしまった。耳が少し、赤くなっているように見えた。ツンデレ、かな。そういうキャラクターだし、私からすると、萌えポイントだ。こういうのをみると、いじめたくなる。もしかして私にはSっ気があるのかもしれないと思いながら、彼がこちらを向くまでじっと見ていた。ちょっとして、再び質問された。
「で、どうなんだ」
「全然していませんよ。皆さんといると楽しいですから。それにもう、さすがに親離れしていますよ」
そう言うと、彼は私をじっと見る。
「……じゃあ、考え事は?」
「考え事はしますよ。中身は……内緒です」
私は人差し指を口の前に立てた。内緒のジェスチャーだ。でも、もちろん城之崎さんは納得せず、私に詰め寄ってくる。
「何ですか?」
思わず、数歩後ずさる。しかし、それも運のつきで……行き止まりになってしまった。壁があって逃げられない。しかも、あろうことか、彼は私が逃げないように両手で逃げ道をふさぐ。
「き、城之崎さん、これは……」
「吐くまでこのままだ」
そう言って、ニヤリとする。この状況は、学園ものでよくある、ある意味王道の壁ドンだ。少し、憧れてはいたが、いざ自分がされると軽くパニックになる。でも、実際にされていなくても、こういう状況を見ているだけでドキドキする。それにしてもまさか、自分がされると思ってもいなくて、怯んでしまう。
「早く言わねぇとこのままだぜ。俺は構わねぇが」
「……」
この状況のせいで鼓動が速くなっていく。多分、さっきの仕返しだと思う。心配してくれたのかを聞いたときの。とにかく、このままじゃ心臓がもたない気がして白状する。別に隠したいことではない。ただ単に、いじめたかっただけ、なのに逆になってしまった。その事を後悔した。
「私にできることを考えていただけです」
「できること?」
城之崎さんは首をかしげる。いきなりすぎただろうか。でも、説明するのは面倒だった。彼の頭の上にははてなマークがついている気がする。
「もしかして、さっきのやつらのことか?」
「はい。支える以外に何かないかと思って」
理解するのが思ったよりも早かった。ちゃんと分かっているところを見ると、人をよく見ているな、と感心する。こういう人が気配り上手な人だろうな、とかいうことを考えていた。
「言っておくが、支えてくれているだけで充分だ。お前が思っているよりも自身の存在が大きいってことだ。だから、余計なことは考えるな」
なんだろう、彼の言葉には人をそうさせる力がある。ものすごく説得力がある。彼の言葉通りにすればうまくいくみたいな。
「そうですね。でも、私も家族だと言うのなら、ちゃんと頼ってくださいね。皆さん、待ってるだろうし、早く帰りましょう」
そして、再び二人で歩き始めた。今日は城之崎さんが他人思いの優しい人だということが分かった。あとは、結構根にもつタイプだということも。萌えポイントが二つも見つかったお出かけだった。さすがは乙女ゲームの世界、と思いながら家に帰った。




