表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/128

脅し

夕食をとっているときは誰一人として口を開く人はいなかった。そして、そのまま食事が終わり、それぞれ部屋に戻る。

「姫華」

「城之崎さん、どうかしましたか?」

戻る途中、城之崎さんに声をかけられた。

「こんなときに悪いが、明日、出かけないか? ちょっと気になることがあるんだ」

と、彼は真剣な顔で私にそう言った。何か大切なことだと読み取った私は、彼と約束をして別れた。明日の十時から出かける約束をした。そして部屋に戻った。

翌日、約束の五分前に準備が完了し、城之崎さんが来るのを待つ。すると、ちょうどドアをノックする音がした。

「城之崎さん、おはようございます」

「じゃあ、行くか」

それから、私たちは外に出る。今日は歩きみたいだ。外に出てから、城之崎さんは周りをキョロキョロしているばかりだった。何かを探している、というよりは警戒しているように見える。

「姫華、公園はどこだ?」

「この間のだったら……えっと、あそこです!」

今いるところからちょうど見えたので、指をさす。すると、彼は私の手を握って公園に向かって歩き始める。いきなりのことで私はオロオロしてしまう。そこを彼に耳打ちされた。

「いいから、いつも通りにしておけ」

「は、はい」

男の人と手を繋いでいるという事実に心臓が速く脈打つ。なんとか平静を装おうとする。そんなことを考えているうちに、あっという間に公園に着いた。

「座っていたベンチは?」

「向こうの噴水の前です」

そう言うと、彼は急ぎ足でベンチに近づく。そしてベンチをじっと見る。何をしているのか分からなかったけど、邪魔をしないように少し離れたところで見ていた。

「……」

「きゃあ!」

「姫華! どうした!?」

私は男の人に捕まってしまった。後ろに人影を感じたときはもう遅かった。

「捕まえた。ボスの命だ、悪く思うな」

声を聞く限り、あのときの人で間違いない。にしても、運悪く近くに人はいない。助けが呼べない。

「動くなよ。動くとこの娘がどうなるか……」

そうやって、じりじりと城之崎さんを脅す。彼は特に焦る様子もなくまっすぐに私を捕まえている人を見る。

「フンッ、女を乱暴に扱うとは紳士的じゃねぇな」

「余裕かます理由は知らないが、この娘はもらう」

その言葉に、私から血の気が引くのが分かった。怖くなって、目をつぶる。すると、

「それでいい。お前はそのまま目を閉じてろ」

城之崎さんがそう言うと同時に私は解放された。それと同時に鈍い音がした。目を開けようとしたが、今起きていることを見るのが怖くて開けられない。城之崎さんが、いい、と言うまで目をぎゅっとつぶる。しばらくして急に静かになった。

「もう開けてもいい」

ゆっくり目を開けると、そこにはいつもと変わらない城之崎さんがいて安心する。怖さから解放されて、目から涙が零れた。すると、彼は私をぎゅっと抱きしめる。

「悪かった、危険にさらすつもりはなかった」

私は、彼が謝るのを黙って聞くことしかできなかった。そして、しばらくは彼に抱きついていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ