予感の的中
「まずは蓮から説明を頼む」
佐々木さんは雪川さんに話をふる。雪川さんはうなずいて説明し始める。
「簡単に説明しますと、彼らが動きを見せました」
この一言で場の空気が凍りつく。私にも分かる。"彼ら"というのはマフィアのことだと。皆の表情を見れば、すぐに察することができた。雪川さんは説明を続ける。
「彼らは、秋川財閥を手にかけました。あの日と同じように。それと、姫華さん」
いきなり話の矛を向けられて、オロオロしてしまう。そんなことはお構いなしに問いかけてくる。
「月野さんと絡まれた日の人たち、覚えていますね。その中の一人は、彼らの一員だと確認が取れました。これは月野さんの情報です」
まさか、あれはマフィアの人たちだったのかと、怖くなる。でも、あれだけ調べても分からなかったのに、一気に進展したのが不思議でならなかった。どうして彼らの一員だと分かったのだろう。顔なんか見せていないはずなのに。私のなかに、色々な疑問が出てくる。
「今ので分かったと思いますが、彼らと姫華さんたちに絡んだ人たちは同一人物の可能性が出てきました」
「そんな……」
ことは深刻になっている。一つだけはっきりしているのは、悪い方へ進んでいること。どうにもできない気がしてならない。
「次は僕から、少し調べて分かったけど、こちらのことが彼らに勘づかれている」
「それ、どういうことだ!」
今まで黙って聞いていた城之崎さんが、大声をあげる。はじめて聞く声に驚いてしまった。
「僕にも、分からない。けど、どこからか情報が漏れ出ている可能性がある。盗作もその一つだ」
佐々木さんの調べによると、盗作も彼らの仕業らしい。でも、本当にどこから情報が。皆の会社にスパイが潜り込んでいるのか、それとも裏切りが生じたのかまでは分かっていないらしい。
「とにかく、もう少し調べてみるから、皆は今のことを頭にいれていてほしい」
「月野さんも何か分かったら、また報告するとおっしゃっていましたし。姫華さんも、何かあったら遠慮なく言ってください」
「はい……」
現状報告は終わり、夕食の準備にはいる。悪い予感が的中してしまった。その事がショックで、また、先が分からず不安になる。こういう生々しいことを聞くと、ゲームとは思えない。ゲームの内容とのズレを感じながら、私も夕食の準備にとりかかった。




