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本番

とうとう時が来た。私の緊張はピークに達する。

「大丈夫。いつも通りやれば」

ステージに上がる間際にシンさんは私の頭を軽く撫で、耳元でそう呟いた。言葉かけをされただけなのに手の震えは治まっていた。緊張もほとんど治まった。拳をグッと握り、気合いをいれる。そして、ステージに上がる。

「これから演奏します。どうぞ、楽しんでください」

シンさんの言葉で会場中が静まり返る。そして、ついに始まった。会場中にピアノとギターの音色と、シンさんの歌声が響きわたる。私はピアノの演奏に集中していたからよく分からなかったけど、シンさんがこちらを見て微笑んでいた気がした。

時はあっという間に過ぎ、演奏のクライマックスを迎える。ここは私のピアノソロだ。聴いてほしい、私の演奏で楽しんでほしい。そう思いながらソロを弾く。そして、最後にシンさんとアンサンブルをして演奏は終了した。

「ありがとうございました」

演奏が終わっても会場は静まり返っている。と、次の瞬間、

「ブラボー!」

「お疲れ!」

「いい演奏だったよ」

あちこちから、声があがる。そして、会場は拍手の波に巻き込まれた。大成功だった。嬉しさで涙が零れそうになる。たかが社内パーティーかもしれないけど、演奏していて自分で感動してしまった。私とシンさんがステージから降りると、玲音さんや佐々木さん、皆が駆け寄ってきた。

「お疲れ様! 姫ちゃん、バッチリよ。シンも!」

そう言って玲音さんはグーサインを出す。佐々木さんも笑顔で労いの言葉を述べる。

「心配しただけ損だったな。悪くなかった」

城之崎さんも褒めてくれているみたいだ。

「皆さん、ありがとうございました!」

色々な気持ちをまとめてお礼を言う。今は心配かけたことを謝るよりも、お礼を言うべきだと思った。とにもかくにも、無事に大成功で幕を閉じられたのでよかった。

「姫華、これあげる。無事に終わったお祝い」

そう言って、シンさんは小さな包みを差し出した。受け取って中身を見てみる。

「ネックレス……本当にもらっても?」

「もらってくれないと、逆に困るよ」

皆はもちろんだけど、シンさんにもきちんとお礼がしたい。何かできないか考えながら、残りのパーティーの時間を楽しんだ。心のおもりが消えたので、思い切り楽しむことができた。たくさんの人と話ができて、すごく楽しいパーティーになった。

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