夕食
私は自分の部屋でくつろいでいた。与えられた部屋は広く、きれいだ。お姫様と言えば言い過ぎだがそう、例えるならお嬢様の部屋と言うのが一番しっくりくるのがこの部屋。ゲームの記憶をたどると、確か日本で一位二位を争うお金持ちの家だった気がする。でも皆が一緒に暮らしてる理由はまだ知らないかな。次の話で分かるってところで充電が切れたからだ。本当にいいところだったのに……
「はぁ、にしても広すぎて落ち着かないかも」
「姫華さん」
ドアの外から声がした。佐々木さんだ。すぐにドアを開けた。
「はい」
「夕食の時間だよ」
「わざわざ呼びに来て下さったんですか?ありがとうございます」
彼は、どういたしまして、と返してくれ、私をリビングへ案内してくれた。なんだか本当にお嬢様気分だ。佐々木さんって大人だな、と当たり前なことを感じていた。紳士って佐々木さんみたいな人を言うんだろう。そんなことを考えている間にリビングに着いた。自分の家は階段降りてすぐだったのに、ここは階段のあとにさらに歩く。
「広いですね、本当に」
「まあ、一応日本で数少ない高級住宅の中に入っているしな」
「はい、知っあ!」
「どうしたんだ?」
「すみません一之瀬さん、何でもないです」
危なかった。私としたことがつい、知ってる、そう言いそうになってしまった。さっきもあった。相当気を付けなければいけない、そう決心する。こんなに苦労するなら、ゲームの記憶だけでも消してほしかった。
「今日は、和食を用意しました。姫華さんは和食、平気ですか?」
「全然平気です。むしろ大好きです」
「そう言っていただけると嬉しいです」
雪川さんは優しく微笑む。その笑顔に安心した。夕食は少し心配していたからだ。と言うか緊張の方が大きかった。でも、彼の笑顔にほっとしたため緊張も自然にとけた。そして、夕食の時間が始まった。
「美味しいですか?」
「はい、とても。このお味噌汁、白味噌ですね」
「分かりますか?」
「はい、でも……普通のとは少し違う気が」
そう言うと雪川さんは少し驚いた顔をした。そして私にひとつ問いかけてきた。
「確かに違います。何が違うか分かりますか?」
「出たよ、蓮の料理オタクっぷり」
料理オタク、どうやら雪川さんはそう呼ばれているらしい。驚いたけど、納得できる。すると、シンさんが私に耳打ちしてきた。
「蓮がああなると誰も止められないからがんばれ」
「え、そうなんですか? ……がんばります」
私はシンさんに言われた通り、知恵を絞った。白味噌よりも少し甘ずっぱかった。あれは……!
「あの、雪川さん。もしかしてリンゴが入っているんですか?」
「!」
雪川さんは驚いていた。口をポカンと開けて……
「正解です。よくわかりましたね」
「やった!」
私は嬉しくてはしゃいでしまった。それから私は楽しい食事の時間を過ごした。私も雪川さんと同じ料理オタクなのかもしれないと感じた。話の合う人がいたのが嬉しい。これからの生活がますます楽しみになった一日だった。長く感じた一日だったけど皆と仲良くなれた気がする。明日からは家事を頑張ろう、そう決めて眠りについた。