条件
夕食の準備をしに行くと、ちょうど皆が帰ってきた。夕食後に手がかりについて話すと、そこでも大丈夫と言ってくれた。根拠はないと言っていたが、それでもわたしの心の支えになっている言葉だったから嬉しかった。話が終わって部屋に戻ろうとしたとき、シンさんに声をかけられた。
「ねえ、裁縫ってできる?」
「できますけど、どうしてですか?」
「よかった、僕の部屋に来て」
理由も聞かされぬままシンさんの部屋に連れていかれた。部屋は男の子らしい部屋で、雪川さんとは全く違う部屋だ。ふと、部屋を見回すとベッドの方にギターが置いてあった。
「ギターをされるんですか?」
「うん、まあ。弾き語りとかはよくするかな」
ギターの弾き語り、格好いいと思う。ギターは男らしい楽器だと思っているから。聴いてみたいという衝動にかられる。迷いながらシンさんを見ていると目があった。
「聴きたい?」
「それはもちろん。弾いてくれるんですか?」
「いいよ、ただし条件がある」
そう言ってシンさんは少しだけ口角を上げた、ような気がした。条件と言われてドキッとする。とりあえず内容を聞いてみることにする。
「これ」
そう言われて渡されたのはシャツだった。
「ボタンが取れたからつけてくれる?」
それは一向に構わなかったけど、当然の如く、なぜ?という疑問が浮かび上がってきた。
「他の人に頼んだら自分でやれって言われるから」
「なるほど……?」
もしかしてまた顔に出てた……?シンさんを見るとうなずいていた。考えていることをほとんど理解されているみたいだ。決して少なくはないショックを抱えながらシャツのボタンを一つ一つ丁寧につけていく。ずっと見られているから緊張してしまった。そのために、少し作業が遅くなってしまった。
「ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。お役にたててよかったです」
そう言うとシンさんはニコッと笑う。不覚にもそのきらきら笑顔に見とれてしまった。気づかれる前に目をそらして正解だった。からかわれるだろうから。しかもシンさん相手だったらなおさらそうだ。
「約束だし、お礼にギターの弾き語りしてあげる」
すると、ベッドのところのギターを取って、軽く音出しを始めた。私は好きな歌手を待つように始まるのを楽しみに待っていた。




