心の影
家に帰ってからは今日の話が頭から離れないでいた。話を聞いて思った。危険だから話さなかったのかもしれないと。
「はぁ」
今日、何度目かのため息をつく。
「どうしたの姫ちゃん? ため息なんかついて」
「玲音さん……いえ、何でもありません」
そう答えた私をじっと見る。思わず目をそらしてしまう。
「嘘が下手ね。まあ、言いたくないなら仕方ないけど。深く聞かないわ」
玲音さんは優しい。でも、隠し通す自信はなかった。話すべきか迷う。隠してもいずれはバレることだけど今話すべきか。もし今の関係が壊れてしまったら? そう考えると怖くて仕方がない。自分で聞くと言ったのに、発言に責任を持てていない。頭の中にイメージが色々わいてくる。
「姫ちゃん? 無理して言わなくていいのよ」
「でも……」
言葉が出てこない。私一人で抱えるにはあまりに重すぎて……少し考え、決心する。一か八か、話してみよう。何よりも、彼らに、特に玲音さんには隠し事をしたくないから。
「ここじゃ話しづらいので部屋に行きませんか?」
「分かったわ」
玲音さんは短く返事をし、私の部屋に向かった。
部屋のドアに手をかけると自分の手が震えていることに気づいた。玲音さんにはバレないように気づかないフリしてドアを開ける。
「姫ちゃん、ゆっくりでいい。ちゃんと待つから」
そう言われて不思議と震えはおさまり、緊張や恐怖もなくなっていた。
「ありがとうございます」
深呼吸をし、一言一言、言葉を選びながら説明する。
「実は今日、皆の過去を聞いたんです。それと一緒に仕事の話も聞きました」
「……」
部屋中に沈黙が流れる。それがすごく長く感じて、怖くなる。やっぱり怒らせただろうか。それとも、嫌われてしまったのだろうか。そう考えるだけで頭の中が真っ白になる。話さないといけないのに、次の言葉が出てこない……
「ごめんな、さい……」
目の前がぼやける。我慢できなかった。反応が怖い、何よりも嫌われるのが怖かった。色々な気持ちがごちゃ混ぜになって涙が出てくる。
「泣かないで」
「ごめんなさい、知られたくなくて隠していたのに、勝手に詮索して……」
自分で何を言っているか分からない。嫌われたくないと、強く思うほどに皆の存在は私のなかで大きくなりすぎていた。計り知れないほど。
「姫ちゃんは悪くないから、泣かないで」
玲音さんはそう言ってくれる。でも、止めようにも止められなかった。玲音さんは私を、思い切り抱きしめた。私の心が弱っているときにいつもしてくれる。まるで心を見透かされているように。
「大丈夫、姫ちゃんは何にも悪くない」
私はずっと玲音さんにしがみついていた。




