隠し事
「姫華さんは彼らの仕事を知っているのですか?」
「えっと、知らないです。教えてくれなくて……」
言いながら気分が沈む。関係ないと言われたあの日を思い出してしまう。自分でも関係ないし、できることがないのは分かっている。けど、面と向かって言われると心に鋭く突き刺さる。それよりも、思い出せない自分に腹が立つ。
「そうですか。やっぱり言っていないんですね」
しばしの沈黙が続く。周りに人はいなく、噴水の音だけがむなしく響いていた。
「月野さんは、知っているんですか?」
教えてくれないのを承知で聞いてみる。すると、彼は少し辛そうな顔をする。
「もちろん、知っていますが……私からは何も」
「いいんです、私には関係ないことみたいなので。ちょっと気になっただけですから」
「一つだけ言えるのは、あなたは関わらない方がいいです。深入りすれば……」
そこで月野さんは黙りこむ。それだけ大変な仕事なのだろうと思う。この話はやめよう。何よりも月野さんが辛そうだから。そう思い、話題を変えようとする。
「姫華さん、彼らは大変な時期にいるので支えてあげて下さい」
「はい、もちろんです!」
「この話は終わりましょう。そうだ、この間……」
月野さんは楽しそうに話始める。さっきの言葉、彼は本当に優しくていい人だと思う。あんなに皆の身を案じてくれるなんて。月野さんの言葉の通り、私にできることを精一杯しよう。それが皆のためになるなら。
「姫華さんはどこからいらしたんですか?」
「え……」
ドキッとする。これは答えない方がいいこと。佐々木さんに、いつか言われた。他の人には話さない方がいい、知られると色々まずいからって。黙りこむと怪しまれるのでとっさに嘘をついた。
「実は家出したんです。事情が色々あって」
「そうだったんですか。これ以上は聞かない方がよさそうですね」
なんとかのりきれた。けど、嘘をつくのは得意な方じゃないため、いつかバレるのでは、とヒヤヒヤする。深く詮索しないでくれた月野さんに感謝をしないと。
「そろそろ、暗くなってきましたね。帰りましょう」
そう言われて立ち上がったとたん、目の前にいくつもの黒い何かが現れた。月野さんはとっさに私を背後に隠した。
「姫華さんは下がっていてください」
……何?




