甘党
「何か好きなものを頼んでいいですよ。遠慮はなし」
「月野さんは何にしますか?」
聞くと、彼はメニューとにらめっこし始める。と、いいものを見つけたのか、ぱあっと明るい表情をする。
「パンケーキとココアにします」
「私は……ガトーショコラのセットがいいです」
そう言うと月野さんは嬉しそうな顔をした。そして店員さんを呼び、注文する。
「月野様、いらしていたのですね」
「はい、いつものとガトーショコラのセットを」
店員さんは注文を受け、一礼して離れていった。
「月野さんはよく来るんですか?」
「はい。甘いものが好きなのでここの常連です」
月野さんは週に三、四回来るらしい。それも、いつも同じメニューを頼むという。私も甘いものが好きなのですっかり意気投合してしまい……
「では、今度姫華さんの作ったプディング食べさせて下さいね」
「はい!」
「お待たせしました。パンケーキとココアとガトーショコラのセットになります」
目の前に出されたパンケーキに驚く。
「月野さんって本当に甘党なんですね」
月野さんはニコニコしている。彼のパンケーキにはシロップがたくさんかかっていた。しかも小皿には溶かしたチョコレートが入っている。
「このココア、特別なんです。何か分かりますか?」
特別なココア、何だろう。月野さんのだし……いや、でも。でも、もしかして
「すごく甘い、とかですか?」
まさか、と思いながら聞いてみる。すると、驚いた顔をされる。
「正解です。よく分かりましたね。飲んでみます?」
気になったのでココアを少しもらう。そして恐る恐るカップに口をつけ飲む。……! これは想像以上です。
「よく飲めますね。私には甘すぎて……」
そんな私を見て月野さんは笑い出す。
「それはそうです。これは私に合わせていますから」
とてもおかしそうに笑っている。ココアを飲んだあとにガトーショコラを食べると、苦く感じた。これでどれだけあのココアが甘かったのかが分かる。ある意味月野さんを怖いと思った瞬間だった。
「どこか、行きたいところありますか?」
「あ、この辺に公園とかってありますか?」
もっと月野さんと話してみたい。やっぱり話すといったら王道の公園だと思う。そう思った私は月野さんに聞いてみる。少し離れたところに噴水のきれいな公園があると言うので、そこへ向かった。
「着きましたよ」
車を降りてしばらく歩くと、話に聞いた通り見事な噴水がある。私たちは噴水の近くにあるベンチに座って話をし始める。




